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星の輝き
第21局
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いるのですよ。
−…なるほどな…。

「二子でいいんだな?」
「ああ、二子でお願いする」

「塔矢アキラ相手に二子?」
「あいつ、そこまで強いの?」
「え?プロ級相手に二子って、勝負になるの?」

 
 ざわめく周囲の声をよそに、アキラは黒の碁笥を手に取る
その手はかすかに震えていた。

 その、アキラの様子に気がついたのは、ヒカルと佐為だけだった。
ヒカルは、以前のときの様子が思い浮かんだ。

−あの時もあいつはこうして向かってきたんだよな…
−ヒカル?
−…なんでもない。

 
 アキラはゆっくりと、盤上に二子を並べた。

 その様子を見ていた(ユン)と近くの席の部員たちは愕然としていた。
 (ユン)は校長からの話から、塔矢の腕前を聞いていたので、当然塔矢のほうが上手だと思っていた。塔矢の噂を聞いていた部員たちも同様だ。
まさか、噂の塔矢アキラが、同じ学生相手に置石を置くとは思ってもいなかった。
 てっきり、進藤ヒカルが石を置くと思っていたのだ。

 それは、囲碁部部長の岸本も同様だった。

 彼は今でこそ囲碁部で、その実力により部長の座についている。
 だが、以前、彼は院生として、プロを目指し、プロの予備軍たちとその腕を競い合っていた。
 しかし、彼はその院生の中で上位に上がれず、自分の力に見切りをつけ、プロへの夢をあきらめていた。
だからこそ彼には、プロの力というものが、他の部員たちよりも実感として分かっていた。

 プロ予備軍の院生でさえ、その上位クラスにはこの囲碁部のトップである自分でも歯が立たない。
 
 そして、その院生以上の腕を持つといわれる塔矢アキラが、今、自分の目の前で二子を置いている。

 まさに、信じられない光景だった。


「おい!塔矢が黒だ!」
「塔矢アキラが二子置いてるぞ!」

 
 新たなざわめきが、部屋の中で広がっていった。


 あかりから見れば当然のことだった。
ヒカルと塔矢アキラでは、実力の差は明らかだ。
であれば、塔矢が置石を置くのも当然だった。
 周囲のざわめきの中に聞こえる陰口のような声は若干気になったが、二人の対局に集中することにした。


「お願いします」「お願いします!」


 ざわめく周囲の空気をよそに、二人の対局は始まった。





 序盤の布石を終えたところで、ヒカルの手が止まった。

 盤面を見つつ、深く考えている。
 
 布石の時点では互角。最初の置石の分、いまだアキラがリードしていた。
 
 大盤に並べながら、(ユン)は二人の実力を確認し、驚いていた。
 
 まだ布石だけではあるが、二人の指す石はまさにプロレベルといって遜色がないものと思われ
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