暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
記憶を綴じて ─フェンサー(T)─
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ころも、こちらが従者になった気分にさせられる一因だと思う。

 お嬢様の執事に対する『セバスチャン、よろしくて?』みたいな感じで。

「はぁ……ふぅむ…………じゃ、学校での話とか? てか俺みたいな学生は、半日を学校で過ごすからなぁ」
「────うんっ、それ聞きたい!」
「え、そんな話でいいの?」

 学校での出来事なんて、どこにでもあるようなありふれたものしかない。





 朝に登校してきて、授業受けながら科目によっては寝て、短い休み時間にツレと駄弁って。
 流行ってるものとか、テレビドラマの事とか、身近な事件……思春期真っ盛りな話題に耽ったりとか。

 昼休みに弁当を食いながら、持ち込んだトランプやUNOをやったり。
 放課後に何処に行くか、何をするかを話したり、部活動なんかに励んでみたり。



 こんなどこの誰でも経験するはずの日常的な話に触れて。

 彼女は初めて知ったことを、本当に楽しそうに聞いていた。



 だからなのだろう。

 敵である白の少女。他人(てき)でしかない儚い少女。
 その彼女の心の空隙に触れて、抱かなくていい感情を抱いてしまったのは。





「俺の普段なんてこんなもんだけど。面白かったかい?」
「……そうね、興味深くはあったわ。シューレっていうのはそんな感じなのねー」

 素直に面白いって言ってくれよ。

 シューレというのは、ドイツ語での学校か。

 話を聞かせながら話を聞いていたが、何でもイリヤスフィールは城から外に出たことがほとんどないらしい。
 家庭教師とも言える教育係に常識や教養を学び、日々の暮らしは城の中で何の不自由もなく賄われていたそうだ。

 出会ったときにコミュニケーションが巧くいかなかったのも、それが原因だろう。

 彼女に取っては城中が全てであり、その中で己の世界が完結している。
 聖杯戦争のためだけに冬木に来たと言うが、それなら初めての外界というものをもっと積極的に楽しめばいいのにと思う。

 一歩外へ踏み出せば、そこには未知が溢れているのだから。

「イリヤスフィールは、もっと何処かに出掛けたりとかはしないのか?」
「え、どうして?」
「今まで外に出たことがないんだろ? 夜の間しか戦わないっていうなら、昼の時間の使い方を考えてみるのも有意義なんじゃないかと」
「……ええ、本当はそうしたいところだけど。
 私は原則としてお城に居なくちゃいけないし、あまり長くはこうしていられないから──────」

 そう言った彼女の寂しそうな瞳は、何を想ってその色を映しているのだろうか。

 言葉の意味を正確に把握することは出来ないが、彼女が俺には知り得ない何らかのしがらみに囚われている
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