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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十八 万緑叢中
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考えになる事が素晴らしいです。僕はナルト様に救われました。貴方が与えてくださったこの時間、ナルト様のために使いたい」
きっぱりと断言する君麻呂はナルトを完全に心酔している。自身の命を捧げてもいいという彼の言葉に、困った風情でナルトは苦笑した。そしておもむろに顔を上げる。

「夜明けだ」
蔓を纏う木の間越しに見える空が何時の間にか白々と明るくなっていた。
入り日がジャングルを仄明るく照らすにつれ、獣達の声が次第に大きくなっていく。

しかしながらその鳴声にはどこか慌ただしい印象を受ける。異常を感じ取り眉根を寄せたナルトがタンッと地を蹴った。


一瞬で傍の大木の上へ跳んだ彼は、目を凝らして彼方を遠望する。続いて跳躍しようと君麻呂が腰を屈めるより前に木から飛び降りたナルトは、未だチロチロと宙を舐める焚火の炎を水遁で消した。
「君麻呂。香燐を起こしてくれ」
微かな煙を立たせる残り火を足で揉み消しながら、ナルトは君麻呂に頼む。ナルトに従いおよそ快適とは言えない起こし方で君麻呂は香燐の目を覚ました。

無理に叩き起こされ、香燐がギャーギャーと噛みつく。それを素知らぬ顔で流し、君麻呂は香燐の毛布代わりになっていた羽織をナルトに恭しく返した。
受け取った羽織をバサリと翻す。白き羽織は、ナルトの身をぴったり覆う黒のハイネックによく映えた。

爽やかな早朝には相応しくない臭気が微かに匂う。

ジャングルの奥で真っ黒な煙がもくもくと立ち上っていた。ようやく白み始めた空に棚引くその煙は、不吉な兆しである黒雲のようだ。

目指していた到達点から上る黒煙。曙の空に垂れ込めるソレを、手を翳してナルトは仰いだ。


「面倒な事になりそうだな…」

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