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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十八 万緑叢中
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話、本当でしょうか…?」
「戦火で村が燃えてしまったというヤツか?」

木々の合間から僅かに覗く月が、焚火を囲む少年少女に光を注ぐ。ぱちぱちと焚火から飛び散る火片を見つめながら、君麻呂はナルトに尋ねた。

揺らめく炎がぼんやりと、苔生(こけむ)した岩の上で腰を降ろす二人の姿を照らす。焚火を挟んだ向かいでは、ナルトの羽織を毛布代わりにして寝入る香燐の姿があった。

夜間のジャングルは昼間より遙かに危険で満ちているため、休息をとっているのだ。交代制で見張りをしているのだが、終始番をしているのはナルトであった。就寝する気配もない彼を気遣い、見張りに付き合う君麻呂だが、そう言う彼も眠気に襲われている。
だが頭を振って気を取り直し、君麻呂は油断なく香燐を見据えた。すうすうと寝息を立てる無防備な彼女の態度を苛立たしく思うのと同時に、つられて目蓋が重くなる。
しかしながらどうしても訊かねばと、眠気と葛藤しながら君麻呂はナルトを窺った。


香燐の話では―――中忍第二次試験中、班員の二人が昏睡してしまったため試験を辞退。目覚めた彼らはすぐに故郷の村へ帰還し、香燐のみが中忍本試験を観ようと木ノ葉に残り留まっていた(実際はナルトに会いたかっただけなのだが)。ところが予選試合中と同時刻に、村が焼けたという知らせが彼女の耳に届く。勿論、先に帰った班員の二人も、戦火に巻き込まれてしまった。帰る場所を亡くし、呆然とする香燐の頭を過ったのは『死の森』で己を助けてくれたナルトの姿。他に頼る者もいない彼女は自身の感知能力でナルトの跡を追った―――という事らしい。



「唯一の生き残りなんてよくある話です。作り話とも考えられます」
香燐への猜疑を拭えない君麻呂を、ナルトはちらりと横目で見た。
かぐや一族最後の一人である君麻呂は、香燐を自分と重ねているのだろう。身寄りの無い己がナルトに頼ったのと同じく、村の生き残りである香燐もまた、彼に寄り縋ろうとしている。
不甲斐無い昔の己に似た香燐へ抱くやり場の無いもどかしさ。幼き頃の無力な自分を思い出したのだろうか。
焚火を透かして香燐を睨む君麻呂に、ナルトは心持ち柔らかな口調で答えた。

「過去は取り戻せない。だからこそ今を生きようとする。生き残るという事はそれだけ時間を与えられたという事だよ。その時間をどのように使うかは人それぞれだけど、俺を頼ってきてくれたのなら出来る限り力になりたい」
懇々と述べるナルトの青い瞳に、焚火が鏡のように映り込む。蛍の如く踊る火の粉が、彼の顔を明々と照らした。
「ナルト様はお優しいですね……」
「利用しているだけかもしれないよ?」
ほうと感嘆の嘆息をつく君麻呂に対し、ナルトは肩を竦めた。だが彼の言葉を君麻呂は静かに首を振って否定する。
「見返りがあったとしても、そうお
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