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ゲルググSEED DESTINY
第八十四話 失うモノ
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ソッ、血が足りていない!輸血パックをもっと持ってくるんだ!」

「もういいさ。自分の事は、自分が一番良く知ってる……他の、助かりそうな奴らに、使ってやれ……」

医者としてもここで見捨てるのはつらいのだろう。しかし、現実は非情であり、助かる見込みは薄いと医者も判断していた。本人も助からないと言ってしまっては、普段であればともかく物資が不足している今の状況を見て切り捨てる事を選択する。

「………分かった」

「そんなことは言わないでください!マードックさん!まだ助かりますよ!!」

キラは自分の力が無いことを嘆く。何故こうなってしまうのか。誰だってそうやって悔やむ。今ここでキラに医療の心得があれば何かできたかもしれない。だが、キラにはそんな技術は無い。もとより、アークエンジェルにいる医者が無理だと判断しているのだ。キラに医療の心得があったとしても無理だった可能性の方が高い。
だが、そんなことは関係ない。今のキラに何もすることが無いという。戦う事しか出来ない自分がどうしようもなく遣る瀬無いものとなるのだ――――後悔というものは後から悔やむことになるから後悔という。手に持っていない技術を何故取ろうとしなかったのか。そんな風に悔やんでしまうのだ。

「泣くんじゃねえ、坊主……俺にはお前さんの涙は勿体ねえよ……いいか、俺には艦や機体を直すことが出来ても、この艦を守ることは出来ねえ……誰だってな、自分で決めた、自分の役目っていうのがあるんだ……」

虚ろな目でそう言いつつも、はっきりとした意思を感じるその言葉をキラは一字一句聞き逃さないようにその場でじっと話を聞く。

「俺は、整備士としてやれることをやるって決めた……そういう、自分の意思が、大事なんだろ?坊主が、自分で決めたことは何だ…?その力で、守る事だろ……だったら、守ってやれよ……俺は…整備士として、しっかり坊主や他の奴等を……全力で、手伝って…やる、から……」

「マードックさん……マードックさん!!」

ぼんやりと目を開いたまま息を引き取るマードック。最後まで整備士としての矜持を持っていたのか、彼はそんな事を言いながら息を引き取った。涙を零しながらもすぐに顔を上げる。ストライクフリーダムの所にまで戻り、キラは整備士に告げた。

「ッ……整備と補給に取り掛かってください。それがすぐに終わったら出ます」

キラ・ヤマトはアークエンジェルのクルーを守り切ることが出来ず、コジロー・マードックやアンドリュー・バルトフェルドを死なせてしまった。だがそのことを今、後悔してもどうしようもない。キラはこれ以上守るべき存在を失わせないために、そして、その先に信じる未来の為にこの戦いに勝つことを誓った。

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