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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四十五話 俺は宇宙一のヘタレ夫だ
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あの人の誠実さと勇気が身に沁みる。

「本当は何か酷い事をされたのではないのですか」
「いいえ」
「ですが」
「アンネローゼ様」
「ラインハルト、ジーク、本当に何も無いの」

私が否定してもこの二人はあの人に非が有ったのだとしたがっている。あの人の言う通りだ、私の存在がこの二人を縛り付けている。この二人も私の意志を尊重しようとしない、物としてしか見なかった人達とどう違うのだろう……。溜息が出そうになって慌てて堪えた。

「では何故離婚を? もしかするとあの事件の所為ですか? あの件で責められたとか」
「違います、失礼な事を言わないで、ラインハルト。一度だってあの人に事件の事で責められた事は有りません」
少し強い口調になったかもしれない。二人ともバツが悪そうな表情をしている。でもあの人は一度だって私を責めた事は無かった。逆に私の方が不思議に思ったほどだ。あの人は本当に私に罪は無いと思っていた。

「不当だと思ったのよ」
「不当?」
二人がまた顔を見合わせた。
「私にとってもあの人にとっても私達の結婚は不当だと思った。御互いの意思を無視して行われたのだから。だから私から結婚を解消して欲しいと頼んだの、それだけよ」

あのまま一緒に居たらどうなっただろう? 弟達はあの人に敵意を持ち続け、あの人も私もその対応に苦しんだと思う。あの人は私と弟達の間で板挟みになり私はあの人と弟達の間で板挟みになるはずだ。あの人が公正で有ろうとすればするほど弟達の立場は悪化するだろう。

あの人はその事で私に負い目を持つ筈だ。そして私はあの人が正しいのだと思いつつも何処かであの人を怨むに違いない。そしてあの人はその事で苦しむだろう……。あの人が酷い人ならいい、我儘で冷酷な人なら怨んでも構わない。でもあの人はそんな人じゃない。そんな人なら私を人間として扱おうとはしない筈だ……。

冷徹、非情、皆があの人をそう評している。でも本当はそうじゃない、冷徹、非情なのは表面だけ、その奥には温かく優しい心が存在している。あのまま一緒に居たらいつか私はあの人の優しさに甘えてあの人の心を傷つけ壊してしまうだろう。それどころかあの人の心が壊れるのを望んでしまうかもしれない……。

一緒には居られない、そう思った。あの人にもそれを正直に話した。それが私なりのあの人への誠意だと思った。そして私の事は諦めて欲しいと思った。あの人は一言も口を挟むことなく黙って私の話しを聞いていた。そして私に“それでも私はお前に傍に居て欲しいと思う。よく考えてくれ”と言ってくれた。

私は泣き出してしまった、ずっと心を殺して生きて来た、泣く事など無かった、それなのに泣き出してしまった。あの人が私を必要としてくれているのが嬉しかった。私はこの人の前でなら泣けるのだと思った……。だか
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