暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
マザーズロザリオ編
episode2 路地裏ガッツポーズ
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 二十七層主街区、《ロンバール》。

 かつて俺がソロだった時にはその薄暗い、しかしそれなのにどこか温かい雰囲気が好きで、一時期ホームタウンとして使っていた街だ。この新生アインクラッドにおいてもその独特の空気や岩肌を直接くりぬいたような複雑な地形は変わらずで、余所者には過ごしにくい街だろうが、俺はもう脳裏に焼きついたその道を迷うことなく進んでいく。

それは単純に、「かつてのホームタウン」というだけの理由では無い。

 (そう言えば、初めて会ったのも、この街だったか……)

 居を構えただけでは無い愛着と、思い出のある街なのだ。道を間違うはずもない。そしてかつての職業柄、どのあたりが一番人目につかないかだって、ある程度は把握している。ああ、断っとくがかつての仕事ってのは別にストーカーじゃないぞ、念の為。

 『――紹介するよ。ボクのギルド、《スリーピング・ナイツ》の仲間たち』

 ゆっくりと裏の細道の壁に背をもたれさせ、聞こえてくる《盗み聞き《エアヴェスドロップ》》の効果に耳を傾ける。かつての《聞き耳》スキルとは違って一応解呪スペルでその盗聴能力は消せるものの、今回はどうもユウキはそこまで気は回っていないらしい。抜けててくれて助かるぜ。

 次々と聞こえるユウキの仲間たちの声。流石に声からその腕の程を判断するのは俺には出来ない(玄路さんあたりなら出来るかもしれない)が、ユウキやシウネーさんの動きの滑らかさを見るに相当の手練揃いではあるだろう。それを感じてか、アスナの声に少々の興奮と緊張が宿る。

 『――ボクに……ボクたちに、手を貸してください!』

 なおも続く、聞いていて飽きないユウキの声。
 聞くだけで笑顔になれるような、元気をくれるような声。

 その声が。

 『……あのね、ボクたち、この層のボスモンスターを倒したいんだ』

 彼女たちの目標である、夢物語を、ゆっくりと噛み締めるように告げた。





 俺も既に聞いていた、ユウキ達の、このALOでの、最終目標。
 その理由を俺は知っていた。

 『――もう、二年ほども経ちますか……。最高の仲間たちです。みんなで、色々な世界に行って、いろいろな冒険をしました――』

 俺にした説明を、シウネーさんが繰り返す。
 その声はしっとりと落ち着いていて、何よりやけに滑らかに俺の耳に響いた。

 『――チームを解散するまえに、絶対に忘れることのない思い出を作ろうと決めました――』

 しかし俺は、彼女の……彼女らの嘘(・)に、気が付いていた。
 語り手のシウネーさんの言葉は滑らか過ぎて、俺には何度も台本を練った言葉の様に聞こえたから。

 『――望むことは、あとひとつ……この世界に、私たちの足跡を残したい』


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