暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
氷世界への片道切符
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じ感じ。

しかし、テオドラほどの圧倒的気配はない。だが、ALO基準から見れば、やはり一線を画す強大さだ。

「待って、カグラ」

だからレンは、手だけでカグラを制した。カグラのほうも、レンの表情を見て素直に口を閉じる。

それを見ても全く満足そうな顔にならず、レンは一言だけ鋭く叫ぶ。

「クー!!」

瞬間、漆黒の巨体が二人の間に音もなく現れた。

顔だけでレンの身長にも匹敵する黒狼は、目線だけをレンに向けてくる。

すぐにレンは、ピンと凛々しく立っている犬耳に顔を突っ込むように囁く。

ワォーン!とクーは一声鳴くと、その巨体をもう一度煙るように掻き消えさせた。

同時に遥か彼方で上がったのは、リーファと世にも珍しいキリトの悲鳴だった。二人が再び顔を戻すと、そこにはクーなどアリほどにも見えるほどに巨大なミミズが、大きな大きな大口を開けるところだった。

「なっ…………ッッ!!!」

カグラの、明らかに狼狽した声。

今日は珍しいものをよく見るなぁ、とレンは思う。圧倒的なその景色のせいで声が震えないように気をつけながら、ゆっくりと口を開いた。

「思い出した。思い出したんだよ、カグラ。モンスターがまったく出ないって言われてるアルン高原だけど、それには唯一の例外があるんだ」

「…………………………………」

カグラは何も言わない。まるで、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように、彫像のように固まってしまっている。

「それが、《アレ》だ。半強制的に地下世界《ヨツンヘイム》に連行されるイベント………。広いアルン高原のどこかにたま〜にランダム配置されるって噂には聞いてたけどね。僕も実物を見たのは初めてだよ」

まるで他人事のように───実際その通りなのだが───言うレンに、さすがのカグラも噛み付く。

「そんなのんびりしている場合ではありません!た、助けなくては………!」

「あー、だいじょぶだいじょぶ」

間延びした声で、レンは指差す。

カグラがその方向に目を凝らすと、ちょっとした湖くらいの大きさの大口の中に吸い込まれていくキリトとリーファの小さすぎる影を包み込む、少し大きな影があった。

「あれは………クーですか?」

こくりと頷く紅衣の少年。

「そ。まぁ、よっぽどのことがない限りはクーが守ってくれるでしょ。それに────」

そこでレンはいったん言葉を切った。それに耐え切れずに、カグラはそれに?と問う。

紅衣のケットシーは髪と同じ色のツヤのある真っ黒なネコミミをひょこひょこ動かしながら、顔一杯に悪戯っ子がイタズラをやる時のような笑みを浮かべた。

「ああ見えて、キリトにーちゃんは結構しぶといから」

「…………………」

理由になってね
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