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ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
黒狼の背にて
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いやー」

相も変わらず間延びしたその言葉が放たれた次の瞬間、とうとうクーの運動エネルギーが尽き、仮想の重力がその巨体を引き摺り下ろし始めた。

まるでこれから地面に衝突する隕石の上に乗っているかのような感覚。

それに堪らず悲鳴を上げながら翅を広げようとすると、横からカグラが抑えた。

「今はなりません」

訳を聞く間もなかった。

地面は見る間に近付いてきていて、リーファは来るべき衝撃に耐えるべく目を硬く閉じた。

しかし────

「あれ?」

衝撃は来なかった。

恐る恐る目を開けると、そこには洞窟の中と変わらぬ姿で走り続けるクーがいた。つまりこの黒狼は、あの高さからの落下による衝撃をその四肢だけで完全に受け止めたと言うことなのだろうか。

強靭な四肢が地面を蹴るごとに、乗っている背を通して心地良い振動が伝わってきて、妙に気持ちがいい。

─────って

「寿命が縮んだわよ!!」

詰めていた息を思いっきり吐き出しながらリーファはレンに詰め寄って、頬をつまんでむに〜っと引っ張った。

「時間たんひゅく時間たんひゅく。ひょれに、あにょまま走っへはらいつ着くかわかった物ひゃなかったからねーっていひゃいいはい!いい加減離ひてリーファねーはん」

間延びした声で悲鳴を上げるレンをたっぷり楽しんだ後で手を離してやる。

しばらく患部をさすりながら、こちらを恨みがましそうな目で見てくるレンを横目で睨み返しながら、リーファは改めて周囲を見回した。

眼下には広大な草原が広がり、所々に湖が青い水面を煌かせている。それらを結ぶように蛇行する河が流れ、さらにその先には────

「あっ…………」

リーファは思わず息を呑んだ。

雲海の彼方、朧に浮かぶ巨大な影。

空を支える柱かと思うほどに太い幹が垂直に天地を貫き、上部には別の天体にも等しいスケールで枝葉が伸びている。

「あれが………世界樹か…………」

隣で、キリトも畏怖の念のこもった声音で呟いた。

山脈を越えたばかり────と言ってもすでに遠ざかり始めているが────のこの地点からは、まだリアル距離置換で二十キロメートル近く隔たっているはずのその大樹は、すでに圧倒的な存在感で空の一角を占めていた。根本に立てばどれほどの光景となるのか想像もつかない。

一同はしばらく無言で世界樹を眺めていたが、やがてカグラが冷静かつ涼やかな声で言った。

「それで、レン。領主会談の場所とは、どの辺りなのですか?」

「お、おぉ。それ聞きたい」

「あっ、うん。えーと、今抜けてきた山脈は輪っかになって世界中央を囲んでいるんだけど、そのうち三箇所に大きな切れ目があるんだ。サラマンダー領に向かう《竜の谷》、ウンディーネ
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