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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十五話  決戦(その四)
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令官を任せても良かったか。いやいや、あの男が俺の下に居るならイゼルローン要塞はケスラーでなくても良いわけだ。ケスラーに憲兵総監と帝都防衛司令官を任せられるな。となるとあの男には……。

「閣下、何をお考えですか。楽しそうですが……」
フロイライン・マリーンドルフが不思議そうに俺の顔を見ている。彼女だけじゃない、シュトライト、リュッケも同様だ。どうやら俺は一人でニヤニヤ笑っていたらしい。

「いや、例のエル・ファシルの件を考えていた。フロイラインはどう思う? そろそろ貴女の意見が聞きたいのだが」
「面白い案だと思います。私は賛成です」
ふむ、”反対はしない”ではない、つまり積極的に賛成という事か。

「エル・ファシルの件とは何の事なのでしょうか? 差し支えなければ我々にもお話しいただきたいのですが」
シュトライトが訝しげな表情をしている、リュッケも同様だ。そうか、二人とも軍の作戦に関わる事だと思っているようだ。何か極秘作戦とでも思ったか……。つい可笑しくなって笑い声が出てしまった。

「軍の作戦の事では無いのだ。反乱軍、いや自由惑星同盟を占領した後の事だ」
「占領した後……」
「うむ」
今度は訝しげな表情が呆然とした表情に変わっている。悪いとは思ったがまた笑ってしまった。罪滅ぼしと言うわけではないが二人にも話してみるか、平均的な軍人がどう思うかというのも大事な視点だ。

「自由惑星同盟を占領した後だが、エル・ファシル星域をエル・ファシル公爵領としてはどうかと黒姫の頭領から提案が有ったのだ」
「エル・ファシル公爵領? それは一体……」
シュトライトが首を傾げている。まあ無理も無い、俺が帝国を支配してから新たな貴族などは帝国騎士でも誕生していない。まして公爵など想像もつかないだろう。

「エル・ファシル公爵領ではどのような統治制度を採ろうとそれは自由とする。そう、たとえば民主共和政でも構わない」
「そ、それは……」
シュトライトもリュッケも目を見開いて驚いている。そう言えばフロイラインも似たような表情をしていたな。また笑ってしまった。フロイラインが“閣下”と俺を窘めた。

「しかし、み、民主共和政では統治者は、せ、選挙で選ばれるはずです。公爵家とは相容れないと思いますが……」
リュッケがつっかえながら疑義を呈した。
「彼らが民主共和政を選ぶのであれば選挙で選んだ人物がエル・ファシル公爵という事だ」
俺の答えにシュトライト、リュッケは絶句している。いかんな、笑うのを堪えるのが大変だ、今度はフロイラインも懸命に堪えている。

「例えば同盟の最高評議会議長、ジョアン・レベロが選ばれたとすれば彼はその任期中はジョアン・フォン・エル・ファシル公爵になる」
「……しかし、何故そんな事を」
その通りだ、シュトライト
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