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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
救われた出会い
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ら心配しなくてもいい。あの程度の輩なら、いくらでも論破できるからな。――とりあえず、ここで感情を全部出しておけ。明日から、また忙しくなる」
「!! ……マサキ……」

 マサキは最後にパーティー存続の宣言を残すと、レストランを出て、自分の部屋へと続く階段を登る。
 背後では、無人のレストランが作り出す静寂を、トウマの慟哭(どうこく)が彩った。


 ――相変わらず、薄っぺらい言葉だ。
 上からのしかかる体重にギシギシと抗議の声を上げるベッドの上で、マサキは口元を歪ませた。その形には嬉しさや喜びは全く込められておらず、代わりに嘲笑と嗤笑(ししょう)が浮かんでいる。
 そしてその笑いの裏で、マサキは自身の行動を分析にかけていた。

 普段のマサキなら、去っていこうとする誰かを引き止めることなど、間違ってもしないだろう。近付いてくるのもよし、去っていくのであれば、それもよし。それが、マサキが人と対峙するときのスタンスなのだ。
 だが、今は違った。マサキはトウマを引き止めるために、自身が持っている心理学の知識を最大限利用し、離れようとするトウマを必死に自分と繋ぎとめようとした。
 それだけではない。思えば、彼と出会ってからというもの、マサキは彼に対して、自分のものとは思えない反応をいくつも見せ、その度に自分が一番驚いてきた。そしてそれらの行動は、トウマという人物に対して、マサキがどれほどこだわっているのかということを如実に表している。今日の行動は、その際たるものだろう。
 ――何故自分は、彼にこんなにも固執しているのだろう?
 そう思った瞬間、マサキの喉の奥が、不意に渇きを訴えた。容器に入ったお茶をアイテムストレージから出現させ、口の中に注ぎ込む。食道を下っていくお茶が、触れた場所を満遍なく湿らせ、胃へと向かう。しかし、どれだけ水分を送り込んでも、喉の疼きは収まらなかった。
 仕方なく、マサキは夕食を食べ損なったことも忘れたまま布団をかぶり、目を瞑る。幸いなことに、眠気はすぐにやってきて、マサキは身を委ねた。
 徐々にまどろんでいく意識の中で、小さくならない喉の疼きと、トウマが食堂でのやり取りの中で発した“親友”という響きが、声高に自らの存在を主張し、マサキの脳を掻き回していた。

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