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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
救われた出会い
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のなら、新規プレイヤーたちでパーティーを組み、ソロのテスターを一人ずつ襲っていけばいい。ボス攻略に集まった奴らのレベルなら、それも難しくはないだろうからな。……だが、そんなことをしたところで、何も変わりやしない。今度は新規プレイヤーの中で情報とアイテムの独占が発生し、争いが巻き起こる。攻略に参加できるプレイヤーの数は少なくなっていく一方。……全く以って傑作だな。ナンセンスにも程がある」

 マサキは言い切ると、カップをソーサーに置いた。陶器同士の接触音が短く響く。その音の波は空気を伝い、トウマを共鳴させた。

「それじゃあ俺は……俺は一体、どうしたらいいんだ!? 俺はもういちゃいけないのに、マサキにどうやって罪を償えばいいんだ!?」
「……なら、それを探せばいいんじゃないのか?」
「え……?」

 震え、涙交じりの声を上げるトウマに、マサキは向き直った。涼しげな瞳でトウマを覗き、平坦な唇を動かす。

「俺は向こう(リアル)で理論物理学者だった。そして、その世界じゃ、解らないことなんてそこら中に掃いて捨てるほど有り余ってる。……だから、考えるのさ。長い時間をかけて、小難しい数式を転がして、頭でイメージを思い描いて。一つの理論に何年もの時間をかけることだって、珍しいことじゃない。……お前はまだ、一ヶ月程度しか考えてないんだろう? ――だったら、今は保留にしておいて、また考えればいい」
「でも……」
「もう一つ。もし、お前が本当に俺と離れたいと思っているのであれば、自分のウインドウから一方的に解散を告げて逃げ出せばいい。もし俺からメールなり再結成の要請なりが来たところで、お前は拒否すればいいだけのことなんだからな。……そしてお前は、それをしなかった。つまり――」
「そうだよ!!」

 静かなマサキの声に、突如轟いたトウマの叫びが重なった。心の奥からは感情が堰を切ったように溢れ出し、涙と言葉になって飛び出して、空間に溶け込んでいく。

「俺……もっとマサキとパーティーでいたい。……しょうがないだろ? ずっと……ずっと心細くて……でも、マサキと一緒にいたときは、これ以上ないってぐらいに楽しくて……、親友がいるのがこんなに嬉しいことなんだって気付けたのに……」
「だったら、別に別れることもないだろう。人間って生き物は、どこかで無理をすれば、それだけ別の場所に(ひず)みが生まれるんだよ。嘘をつけば、それだけ心が悲鳴を上げる。心が悲鳴を上げれば、体が動かなくなる。これはお前も知っているだろう? 結局、嘘をついたところで、いいことなんて何もないのさ」

 マサキは冷静に言い終えると、カップに残っていた液体を飲み干し、立ち上がった。一瞬、トウマがびくりと体を震わせるが、躊躇うことなく、右手をトウマの肩に乗せ、ささやく。

「俺な
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