第4話 投資話
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抱えた。
羽来はその借金の返済の為に、生徒の交付金の債権化に目を付けた。
交付金の債権化については、経済力の弱い一人暮らしの若者が自動車等の高額の商品を購入する際に、高利のローンを組まなくてもすむように開発されたのがきっかけである。
「将来を奪うのではないか」
「いや、自分自身に責任を持つような人材育成につながる」
等と市議会では意見が対立したが、最終的には賛成多数で可決された。
投資会社の社員を名乗り、有利な配当をうたうことで、学生から債権を預かり、借金の返済に充てる。
債権は、一般の市場で売買されており、サイキックシティからの交付金が担保されているので、市債並の信頼度を持っている。
サイキックシティはそもそも、技術力で世界の頂点にいるため、財政は潤沢である。
だから、羽来はすぐに大金をつかむことができた。
それでも、配当金の支払いが必要となるため、自転車操業となる。
なので、羽来の計画は、適当に金を集めて夜逃げするというものだった。
今のところ、配当も滞っていないため、生徒たちからは疑いの目は向けられていない。
当然、話しかける相手も選んでいる。
教師の権限で、学生の能力を閲覧し、予知能力の高い生徒は対象からのぞく。
あと二週間後に、次の配当の支払日が来る。
それまでに、国外に逃亡し、後は亡命といって外国の研究機関に就職する。
そのようなことを、前髪をいじりながら考えつつ、羽来は目の前にいる牧石啓也という名前の獲物の様子を観察する。
目の前の少年は、数ヶ月前にこの都市に編入してきたばかりの生徒で、既にレベル2に到達した超能力者である。
彼のような、急激に成長する超能力者は、そのまま高いレベルに到達する可能性を持っている。レベル4は確実でうまくいけばレベル5にも到達すると思われる。
既に彼の能力内容をもとに、融資可能な金額を算出している。
間違いなく、マンションを購入できる金額は融資できるはずだ。
目の前の少年が、札束に見えてしまう。
そして、この都市の滞在期間が短く、本来であればサイキックシティでの常識を習うはずの予備校すら通っていない少年であれば、多少変なことを話しても怪しまれないと確信していた。
現に、牧石は羽来に一つも疑問を口にしなかった。
羽来は自分の話術が向上したことも、交渉の成功についての自信に繋がっていた。
途中に携帯電話が鳴ったのも、自演であり、相手など存在しない。
後で、調べられると困るので実在する市議会議員の名前を使用したが。
羽来は、視線を牧石に戻す。
牧石は、考えをまとめたようで、疲れた顔を見せながら返事を口にした。
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