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くらいくらい電子の森に・・・
第九章
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を話しかけても返してくれなくて…
やんちゃだった僕はそれがもどかしくて、なんとかこっちを向いてもらいたくて、カバンを奪ったりスカートをめくったりしたっけ。その瞬間は、ちょっと怒ったような顔をしたけど、また遠くを見始めてしまうんだ。


―――初恋だった、と思ってる。


「――柚木と正反対な感じだったな」
「なるほど、清楚で大人しい少女だったわけか…」
「……どういう意味かなそれは」
後ろから柚木に頭を掴まれた。左には同じく頭を捕まれた紺野さんがいる。
「い、いや…俺は柚木ちゃんのこういう、猫みたいな奔放さも好きだなぁ…なあ、姶良」
「そ、そうそう!あの、正反対というのはよい意味の正反対で…」
「よい意味って、なに」
「…ストレス少なくてムダに寿命長そうな感じが…ぐぐっ」
す、すごい握力だ…親指がこめかみに刺さって痛い。
「ほほー、言うようになったね」
「…いやもうすみません。本当にすみません…」



「……ま、色々あってな。流迦の天才的なプログラミング能力に目をつけて、プログラミングのことを色々教えて、10年間あっため続けてきたわけだよ」
柚木のアイアンクローから解放された紺野さんが、青い顔をして座りなおした。…左手の握力は、右手より上だったらしい。
「どのくらい、通ってた」
「ちょっとした家庭教師くらいは通ったんじゃないか」
「そうか…」
少し、気持ちが軽くなった。
「1人じゃなかったんだね。…それだけ、気がかりだったんだ」
煙と一緒にため息を吐き出して、ふと目をあげると、柚木が腑に落ちないような顔をしていた。…それを僕に聞くべきかどうか、迷っているような。
「…流迦ちゃんの家族は、あのことを『忌まわしい事件』と考えているんだ。彼女のことを話題にのぼらせるのはタブーになってる。特に、僕の前では。…だからあの人たちが、流迦ちゃんを見舞ってるとは思えない。…僕のせいだ。僕がもっと…しっかり、色々考えてあげられれば。僕が」
「もういい」
思考の深みにはまりそうになったとき、紺野さんが話を打ち切った。
「嫌なことは思い出すな」
「…紺野さん」
「10才の子供に何が出来た。…どうにもならないことっていうのは、山ほどあるんだ。全部、自分のせいにするな」
…この人は、どこまで知ってるんだろう。柚木のほうをちらっと見ると、ふいと目を逸らした。『すっごい不満だけど勘弁してあげるわ』と言われたような気がした。…いつもいつも、僕の都合なんてお構いなしで独走するくせに。


「それより、これからのことだ。体よく逃げ込んだものの、ここに調べが入るのも時間の問題だ。それまでに俺は、自分への疑いを晴らし、行方不明の患者を助け、プログラムのデバッグを完全に終了させ、密かに配信しなければならない!」
「やるこ
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