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くらいくらい電子の森に・・・
第九章
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な微笑を返した。やっぱり、少し落ち込んでるのかもしれない。
「姶良。聞いていい」
柚木が、珍しく遠慮がちに声を掛けてきた。
「あの人を、知ってるの」
――多分。小さく頷いて返事の代わりにする。
「でも自信がないんだ。もし『あの人』なら、僕よりもっと…」
「――言ってみろ。彼女は誰だ」

「狭霧 流迦。…僕の、従兄弟だ」

「…何!?」
…僕が10才くらいの頃、どこか遠い場所の病院に入ったと聞いた。確かその頃、14才くらいだったはず。
「あ、でも待って。そう思ったんだけど、年齢が合わないよ。あれじゃまるで中学生だ」
「…『事件』を起こしてあの状態になって以降、年をとらなくなったと聞いた」
「そんなことが!?」
「記憶喪失者には、よくある話だ。自分の本当の年齢がわからないんだよ。…あの子には事件より前の記憶はない」
そう言って、懐から煙草を取り出した。そして僕にちょっと掲げて見せる。僕は「吸って構いませんよ」の意味を込めて、手のひらを差し出した。すると手のひらに煙草を一本置かれた。…どうも正しく伝わらなかったらしい。でも折角貰ったので火をいただく。
「んふふー、これなー、ガボールのライター」
「それさっき聞いたよ」
「姶良って、煙草吸うんだね」
柚木が意外そうに僕の手元を覗きこんできた。
「や、あれば吸うくらい。税金、高いから普段は吸わない」
「っかー、しょぼい理由だな!」
紺野さんがちゃかしに割って入ってきた。
「合理的と言ってくれよ。…ねぇ、流迦ちゃんとはいつから?」
「…んー」肺の中に煙を溜め込むように唸って、一気にぼわりと吐き出した。
「病院に入る、少し前からだ。…結構長いな」
「MOGMOGの産みの親っていうのは」
「そ。…あいつ、天才なんだよ」
難しい顔をして、まだ長い煙草を携帯灰皿に押し当てた。
「流迦ちゃんが、天才?」
「10才のお前が知ってる『流迦ちゃん』がどんな子だったかは知らないが、俺が知っている狭霧流迦という女は、危険なくらいの天才だ」

10才の僕が知っている、流迦ちゃんという女の子…。

僕は、思い出せる限りの流迦ちゃんを頭に描いた。長くてつやつやした黒髪と、ちょっと旧式なセーラー服が素敵で、あのプリーツのスカートが風にはためくたびに、ちょっとどきっとしたものだった。この人が僕の従姉妹!と思うだけでなんか誇らしくて、みんなに見せびらかして歩きたいくらいの気分だったっけ。料理が上手で、休みの日になると遊びに来る僕に、ホットケーキを焼いてくれた。本を読むのが好きで、色んな物語を僕に話して聞かせてくれた。それでいて、たまにゲームなんかやると常勝無敗で、誰も彼女には叶わないんだ。運動は全然ダメだったけど。

時折、ふと遠くを見るような目をしていた。
そんな時は、僕が何
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