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星河の覇皇
第四部第五章 英雄と梟雄その一
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                   英雄と梟雄
 サラーフが滅亡したこの時、エウロパでは大規模な祭典が行われていた。
 復活祭である。キリスト教の時代からある祭りであり、かつてはイエス=キリストが十字架にかけられ、そこから復活したことを祝う祭りだと言われてきた。
 だがこれはキリスト教以前からあった祭りである。太陽の復活を祝う祭りなのである。
 こうしたことはエウロパでは昔からよくあった。クリスマスにしろそうである。
 クリスマスでは巨大なモミの木を飾る。ここに一つの矛盾があるのだ。
 キリスト教はシオンの地で生まれた。裁くと岩山に覆われた荒涼とした大地で、である。
 ここには緑豊かな木は少ない。しかもモミの木なぞあろう筈がない。だが何故クリスマスでモミの木を飾るのだろうか。
 これは北欧の信仰からきている。そうした説があるのだ。
 世界を支える大樹ユグドラシル。あのモミの木こそそうなのだと言われているのだ。
 そしてツリーに飾られている多くのもの。これは世界にある様々なものを現わしていると言われている。このようにかってのキリスト教の世界にも北欧やその他の神々への信仰の名残が生き残っていたのだ。
「それに完全に気付くまでは長くかかったな」
 オペラを観終わったラフネールは同席していた閣僚の一人である財務長官ウォルター=ローズマンに言った。
「そうですね。私は神話のことにはあまり詳しくはないですが」
 彼はその青灰色の目をしばたたせて答えた。彼は財務官僚出身で何かと倹約に五月蝿いことで知られている。特に軍部とはギクシャクしていることで有名だ。
「君は少し財政のことだけを考え過ぎだ」
 ラフネールはそんな彼をたしなめた。
「私の仕事ですので」
 だが彼はそれを悪いとは思っていない。むしろ誇りだと感じている。プロ意識の強い男なのだ。
「やれやれ、相変わらず堅苦しい」
 ラフネールはそんな彼に苦笑した。
「まあいい。だがそうしたことを知っていて損はないと思うぞ」
「子供の頃から聞かされた分は知っていますが」
「それだけの知識があれば充分だ」
「ですが閣下はそれ以上をお求めになられる」
「私が!?」
 彼はそれを聞き驚いたような顔になった。
「はい。いつも神話の解釈やオペラの演出についてお話っされますがこれは専門知識のない者にはいささか苦しいです」
「そうだったのか。どうもそういうことには気付かなかったな」
「どうも閣下は趣味にのめり込まれるようですな」
「否定はしない」
 彼は言った。
「私は趣味の多い人間だしな」
「私も趣味にはのめり込むほうですが」
「君の趣味は何だ」
「サッカーの観戦と」
 彼は実は熱心なサッカーファンとしても知られている。
「仕事です」
「そうか、だからいつもあ
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