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星河の覇皇
第八部第三章 異邦人その三
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わし等は船の出入港を満足にしておればよいからな」
「そういうことです」
 若い駅員の言葉は妙に説得力があった。
「自分の仕事をしていればいいんですよ。俺はそう思いますよ」
「じゃあ真面目にやれ。いいな」
「はいはい」
「はいは一回だ」
「はい」
「・・・・・・本当に不真面目な奴だな、君は」
 二人はそんなやりとりをしていた。とりあえず彼等の仕事は気楽なものであった。だが中にはそうそう気楽ではない者もいるのである。
「やれやれといったところだな」
 連合軍後方支持部長コアトル元帥は連日自分の下に送られてくる書類の山にいささか辟易していた。
「書類だけでもこれだけあるのか」
「残念ながら」
 背広を着た男がそれに応える。
「これからまだまだ増えますよ」
「勘弁してくれ」
 思わずそう言った。
「このままだと執務室が書類で埋まってしまうぞ」
「既にガンターズは物資で埋まっていますが」
「それでもまだまだこれからだそうだな」
「はい」
 背広の男は答えた。
「まだ艦隊の集結も為されておりませんし。話はこれからです」
「それに宣戦布告もまだだ」
「はい」
「それでこれか。実際に戦争になったら後が思いやられるな」
「それはそうですが」
「二千個艦隊の物資となるとまさに天文学的数字だな。その書類にサインするだけでも大変だ」
「企業ではそのおかげで潤っているところもありますけれどね」
「これだけの物資が調達されて動くのだ。それも当然だろう」
「保険業界が軍人に色々とアプローチをかけているそうですよ」
「何という奴等だ」
 これにはコアトルも呆れた。
「死ぬのを楽しみに待っているようだな」
「彼等にしてみればそれが仕事ですから。一概に悪いとは言えませんよ」
「それはわかっているつもりだ。そんなことを言ったら葬儀屋は全員極悪人だ」
「その葬儀屋も色々楽しみにしているそうですよ」
「我々が死ぬのがそんなに嬉しいのか」
「ですからそれが仕事なのです」
「そうだったな」
 コアトルは顔を苦くさせた。
「そのかわり彼等の無事を祈る者もいますよ」
「家族か」
「あと医者です」
「・・・・・・そうだろうな」
 彼等にとっては仕事が増えるからである。患者も多過ぎてはたまったものではない。
「あと宗教家。将兵のところに来てその心の平穏を導いているそうです」
「それはいいことだな」
「占い師も繁盛していますね。そうした関係のグッズが売れているとか」
「それは面白いな。だが国の財政は大変だ」
「国防費はもう火の車ですからね」
「ああ」
 国防省の財政も無限ではないのだ。予算の配分は厳しく決められているのだ。
「あれだけではとても足りないだろうな」
「それで長官も頭を悩ませておられるようです
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