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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第6次イゼルローン攻略戦(4)
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、それから反省するところは反省したつもりだ」

 隣りに立っていたキルヒアイスは息を呑む思いであった。ラインハルトは幸か不幸か、今まで挫折を味わったことがなかったのだ。そしてそれに初めて直面した時、この人はそれからなんと多くのことを学んでいるのだろう。一つの失敗から、十の教訓を得ているようだ。

「卿は私のあだ名を知っているか?」
 ラインハルトはロイエンタールに問いかけた。
「ええ、いくつか」
「挙げてみよ」
「金髪の孺子《こぞう》、スカートの中の少将、成り上がり者、それから??」
「いや、十分だ」
 ラインハルトは苦笑を大きくした。言え、と言ったのは彼だったが、そこで素直に答えるロイエンタールもロイエンタールである。
「ロイエンタール准将はなかなか面白い男だな」
「口が悪いのが難点ですが」

 ミッターマイヤーは冷や汗をかきながら、彼の親友の弁明を試みた。ミッターマイヤーは平民である。ロイエンタールは貴族だから気にしないのかもしれないが、皇帝の寵姫の弟を軽々しくて敵に回すだけの理由は、彼にはなかったからである。だが、ラインハルトという男は、想像よりも寛容な男であるようだ。
「艦隊増強の意図は理解しました。ですが、なぜ、小官とロイエンタールを選んだのでか?」
 ミッターマイヤーはそこが聞きたかった。だが、ラインハルトの答えは、半ば二人にとって挑戦的であったが、それ以上に好ましいものであった。
「我が艦隊の高速運動についていけるだけの者が、卿らしかいないからだ。それとも、卿らをもってしても、それは無理なのか?」



「敵のウィークポイントを的確に見抜きこれをノンストップで直進する、言うは易しだが、なんという速度か」
 ミッターマイヤーは、ラインハルト艦隊の高速運動に心底驚いていた。まさか自分の全力と同じ速度で、千隻単位の艦隊を運用できる者がいるとは。
「少なくとも、我々が出会って来た上官の中で、もっとも有能であることは間違いないな」
 ロイエンタールにとって、これは最大限の評価だったろう。事実、ロイエンタールとミッターマイヤーの期待に応えるだけの能力を、このラインハルト・フォン・ミューゼルという男は、敵軍の真っただ中で証明してみせているのである。



「追ってきたぞ、キルヒアイス! 奴らは罠にかかった」
 ラインハルトの表情も声も、燦々たる光彩に満ち満ちて、不安や危機感は原子レベルですら存在しないように見える。演技の一面はあった。彼は一度敗北しかけた将である。かつて獲得しかけた信頼と信用を再び手に入れねばなるまい。ラインハルトは今も信頼に値する、と彼は彼の麾下全将兵に信じさせる必要があったのである。

「卿ら、僅かの狂いもなく、我が節度に従え。尽く、我が命令、我が指示に服従して、誤ること無きよ
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