第六部第四章 ゲリラその三
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わった。暫くして木口が入って来た。
「会議のお時間です」
「うん」
彼はそれに頷き立ち上がった。そして部屋を出て会議室に向かった。
「今回は南西地区の艦隊司令も来ているのだったな」
「はい、作戦の実行段階の詰めの会議ですから。特別に来てもらいました」
「よし。あの地区の艦隊司令はカーロス=クラウス元帥だったな」
「はい」
カーロス=クラウスはベネズエラ出身である。背はそれ程大きくはないが茶色の髪を整え口髭をたくわえた気品のある老紳士である。ベネズエラ出身であるが名がラテン系でないのは彼の祖先のルーツがオーストリアにあるからだ。そのせいか彼はよく『老貴族元帥』と仇名されるが彼は自らがベネズエラ国民、そして連合市民であることに対して強い誇りを持っている。
「あと地区司令もお呼びしています」
「ハリアム=モハマド元帥か」
「はい、あの方も出席されています」
「そうか。ううむ」
八条は彼の名を聞いて難しい顔をした。
「どうかされたのですか?」
「いや、あの人は難しい人だから」
「ああ、成程」
木口はそれを聞いて納得したように頷いた。
「確かに。昔の我が国でいう薩摩隼人といった方ですからね」
「マレーシア人というのはそうした人が多いな。剛直というか何というか」
「昔からですね。二十世紀の終わりからでしたか」
「ああ。あの頃からアメリカにも中国にも強硬に主張する。当然我が国にも」
「東外相もぼやいておられたそうで」
「この前マレーシア首相と会談したそうだな」
「はい、そこで日本との貿易を巡ってかなり激しいやりとりがあったとか」
「で、東外相はどうされたのだ」
「何とか踏み止まられたそうですがかなり譲歩されたそうです。あんなに手強いのはアメリカにも中国にもいないと仰っていたそうです」
「まああの人は元々中南米各国との交渉にあたっていた人だからな。中南米にはああいったタイプはあまりいない」
「いや、他の国にもいませんよ」
「そう言えばそうだけれど。それにしてもマレーシア人、特にモハマドという姓にはそうした人が多いような気がするな」
ただしこの二人のモハマドには血縁関係はない。マレーシアには多い姓であるだけである。
「そういえばそうですね」
「連合にいる元帥の中であの人が一番頑固だ」
「頑固ですか」
「それだけじゃない。剛直だしそれでいてバランス感覚もとれている。手強いよ」
「長官でも苦手な方がおられるのですね」
「いや、あの人は特別だよ」
こうした話をしながら廊下を進んでいく。そして会議室の前に来た。
「どうぞ」
衛兵が敬礼をした後扉を開ける。木口は入口に残り彼を見送る。八条はそれを受けて会議室に入った。
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