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星河の覇皇
第六部第四章 ゲリラその三
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「ええ。地の利は彼等にありますから。このまま彼等が疲弊するのを待つことにします」
「けれどそれで市民が納得するかしら」
「市民が」
「そうよ。彼等はいつも戦いが早く終わることを願っているわ。特にマウリアとの交易をしている人達はね」
「それはわかっております」
 八条は答えた。それがわからぬ彼ではなかった。
 実はこの解放軍の討伐はマウリアとの交易を行っている貿易商や企業からの要望もあったのだ。中にはそれで生計を立てている者も多い。彼等にとってはマウリアとの通商の回復は命そのものである。
 だが今は交戦中である。これでは通商も交易も不可能である。それは彼等にとっては死活問題である。
 彼等にしてみれば生活がかかっている。家族や従業員のこともある。だからこそ早期の解決を望んでいるのだ。
「ですが下手に攻め込んで損害を出すのもどうかと思いますし。企業や貿易商には中央政府から補償金を出しておりますし」
「それでも限度があるでしょう?中央政府だってそんなに潤沢ではないし」
「はい」
 中央政府の収益は黒字である。だが楽観視できないのが国家の財政だ。今は潤沢でもすぐにそれは赤字に転落するものなのである。
「そうそう長い間交戦状態にあって通商をできなくしていてはまずいのじゃないかしら」
「はい」
 八条はそれに頷いた。
「ではそれを今からの会議で話し合うことにします」
「それがいいわね。けれど無理は駄目よ」
 伊藤はそう忠告することも忘れなかった。
「損害を出しても同じだから」
「難しいですね」
「戦争はそういったものよ。特に民主主義国家の戦争はね」
 他の政治形態の国家よりも市民の支持や声を意識しなくてはならない。一歩間違えればそれが作戦の失敗や敗戦にも繋がる。そうして敗戦した例もある。また無益な戦争に走る怖れもあるのだ。有権者の声は時として危険な刃にも成り得ることの証左の一つでもある。
「けれどそれを巧く処理してこそ政治家というものよ」
「はい」
「だからこそ面白いと言えば暴論かしら」
「そうでしょうね」
 八条はその言葉に苦笑せざるをえなかった。
「民主政治では戦争は難しいものだけれど」
「海賊との戦いも戦争ですか」
「そうね。戦闘ではあるわね」
 戦争と戦闘はまた違うものではあるが。
「どちらにしろ損害を出すのは好まれないわね」
「はい、それが難しいところです」
「時間をかけるのも駄目、さあどうするつもり?」
「何とかするしかないですね。このまま時間をかけてもマウリアとの通商が滞り支障をきたしますから」
「そうね。けれど貴方なら何とかできると思っているわ」
「それは買い被りですよ」
「そうじゃないと思うわ、うふふ」
「また。からかわないで下さいよ」
 こうして二人の電話での会話は終
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