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星河の覇皇
第五部第三章 巨大戦艦その四
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「軍の編成が終わった後で宜しいということでしょうか」
「いや、それでもまだ駄目だ」
 アッディーンは首を横に振った。
「それから別のところに動くべきだ」
「何処にですか?」
「南方だ。まずはあの地域を併合するべきだ」
「南方ですか」
「そうだ。そしてそこで勢力を増強する。東に向かうのはそれからでいい」
「閣下のお考えは南方ですか」
「ああ。それが最も労少なく功多いと思うがな。貴官はどう考える」
「私個人の考えですか」
「そうだ。遠慮はいらん、言ってくれ」
 アッディーンは部下に対して奢らない。率直に意見を求める。そしてそれがいいと思ったなら躊躇することなく受け入れる。思考の柔らかい男であった。
「それでは」
 ハルダルドはそう言われ自分の考えを述べることにした。
「南方もいいですが私はそれよりもまず北を何とかするべきかと」
「北か」
 アッディーンはそれを聞き眉をピクリ、と動かせた。
「はい。南方は小勢力が分裂しており外交や占領後の統治が困難であります。それに地形が複雑であり地の利を心得る現地の勢力に思いも寄らぬ損害を受ける恐れがあります」
「攻めるには適していないと」
「はい。ですが北方はサハラにおいては比較的地形が単純です。ブラックホールやアステロイド帯も少ないです」
「確かにな」
「それに北方の勢力は小規模です。彼等を破ったならば後はエウロパの総督府だけです」
 彼は話を続けた。
「奴等は我々にとっては不倶戴天の敵。戦うにあたっては大義名分が手に入ります」
「かっての十字軍に対した時のようにか」
「はい。奴等をこのサハラから追い出したならば我々の評価はさらに上がるでしょう」
「そうしたことを考えても北を攻めるべきというのだな」
「そうです。総督府は十個艦隊、それに北の諸国もようやくシャイターンの手で一つになったところです。それに兵力も少ないです」
「確かにな。だが一つ問題がある」
「?何でしょうか」
「あのシャイターンという男だ。貴官はどう見るか」
 彼はここで尋ねた。
「シャイターンですか」
「そうだ。俺はあの男は只者ではないと思うが」
「確かに今までは見事なまでに勝利を収めていますが」
「それも圧倒的な勝利をな。エウロパもサラーフも彼の前に敗れた。特にサラーフは兵力の六分の五を失っている。凡将ではないことだけは確かだ。いや」
 彼はここで言葉を変えた。
「名将だ。それも政戦両略のな。北方の権力を一手に握ったことからもそれはわかる」
「ハルーク家と結びついていますし」
「あの家の当主であった未亡人と結婚してな。そこに目をつけたことからもそれは窺える。俺はあまり好きなやり方ではないがな」
「はい」
 アッディーンは婚姻政策などといったは好まない。彼はそれより力を重視する
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