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SAO─戦士達の物語
SAO編
五十二話 夢想の子
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に対して、ゲーム開始からの自分についての説明を始める。

 自分に感情摸倣機能が有る事。
二年前のゲームの開始時、ユイに対して上位プログラムが一切のプレイヤーへの干渉禁止を命じた事。
そのくせ、その他の役目に関しては全くノータッチで有ったため、彼女はやむなくプレイヤーの精神状態のモニタリングだけを続けた事。
結果、ゲーム開始時からプレイヤー達が陥った恐慌状態における恐怖や絶望、怒り。果ては狂気に至るまで、人間のありとあらゆる負の感情をモニタリングするだけで、問題を解決へと導けない矛盾した状況が続き、人間の負を受け取り続けたためにユイの中でバグが蓄積。彼女を崩壊させて行ったと言う事まで。

 その全てを、ユイが悲痛な表情で、時には泣きながら話す間、リョウを含めた三人は一言も発しなかったし、発せなかった。

 ただ、ユイが自分の崩壊の理由を話し終え話題を切り替える瞬間。彼女の眼に、それまでの悲しい光では無く何かを懐かしむような暖かい光がほんの少しだけ灯ったのを見た瞬間、リョウは自分の中に、強烈な違和感が芽生えるのを自覚した。

 それまでの説明の中でユイは、「自分には感情摸倣プログラムが組み込まれており、表情も涙も全て偽物」そう言って、アスナに謝罪した。
しかし、幾ら感情摸倣プログラムと言えど……今のユイの瞳の光は完成され過ぎている様な感覚がしたのだ。
瞳の中の、深い悲しみと、自責の籠った暗い光。何かを懐かしみ、その思い出を慈しむような、優しく温かな光。
ユイの眼から読み取れる感情の光は、人間と比べても全く変わらない……否、或いは人間以上に、人間“らしい”物で、とても偽物とは思えない……

 自分の姉は、此処まで完全な感情摸倣のプログラムを作り出していたのだろうか?

そんな疑問が、リョウの頭の中を支配し始めていたが無論、リョウが考えるその間にも話は進む。
 再び続いたユイの言葉は、思考の海に潜ろうとしていたリョウの意識を浮上させる。

「キリトさん、アスナさん……わたし、ずっと、お二人に……会いたかった……森の中で、お二人の姿を始めてみた……すごく、嬉しかった……おかしいですよね、そんなこと、思えるわけ無いのに……私、只のプログラムなのに……」
 その最後の一言に、リョウはピクリと眉を動かし、我慢できずに自分の疑問から湧き出た言葉を差し込んだ。

「只のプログラムってのはちょいと違うんじゃねぇか?」
「え……?」
「今この場所に居る時点で、お前が只のプログラムだってのは否定出来るぜ。俺」
 リョウが自信を持って言うには訳があった。
ユイが逆らったからだ。上位のプログラムに対して。

 通常、プログラムと言う物が自分より上位の存在……例えば人間や、上位プログラムに対して「逆らう」と言う反応を示す事は、
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