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SAO─戦士達の物語
SAO編
四十九話 過ぎゆく夜
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態で演奏した場合、正しい場所以外で違う音を出そうとすれば妙な音が出るだけで唯のミスになるのだが、オリジナル曲でそれをした場合それに対応した音が出るだけで、別段ミスになる訳ではない。
弦を動かす速さや、テンポ調節や、調変更。力加減によっても音は微妙に変化するため、早い話、慣れさえすれば、実際に楽器を演奏できなくても、身体的な技術無しで自在に正真正銘自分だけの曲を演奏できる。
要はSAOのオリジナル音楽スキルは自由度が高いのである。

閑話休題

 さて、サチが指定した「三つ目」と言うのは、リョウがとある曲をアレンジしてやるためにオリ曲に起こし(オリ曲作成時に規定楽譜を引用する事も可能)、良くサチと二人だけで合わせて遊ぶ幾つかの曲の内の一つで、名前の通り三番目にリョウが起こした曲である。
原曲は全て歌詞が英語であるため、サチもこの曲は、英語で歌うようにしていた。

 ちなみに、ヴォーカルをアシストするシステムは、それを使用するかどうかをプレイヤーが任意に選択する事が出来るが、サチはそれを切っていた。
理由は単純。リョウにそうするように言われたからだ。

 カラオケ等でもそうなのだが、エコー等を利用して出した声を本来より上達して聴こえさせると言うシステムには実は弱点が有り、《本当に上手い人の歌》も同レベルに、ありていに言えば、レベルを下げて聴こえさせてしまうのだ。
その事をリョウの方は知っていたため、サチにはそのシステムを切るように言っている。
ちなみに理由ははぐらかした。
言えば絶対に、自信があまり無いサチはそのシステムを外そうとしないだろうからだ。
リョウは、サチの歌の実力を、実はかなり評価していた。

「いくぜ?」
「……うん」
 深呼吸し、落ち着きを取り戻した顔で、サチが答える。
再生ボタンを押し、リョウも楽器を構える

 先ずはコンピューターの出す音と共にリョウの伴奏が始まり……サチが歌い出す。



「──────、─────」
 始め、メインとして前に出ていたリョウのヴァイオリンが、サチが出る直前、霞みの様に薄れ、バックに回る。
メインになり、歌い出したサチは、先程の自信なさげな表情が嘘のように穏やかな顔で、風の無い湖面の様に静かに、染み込むようにしっとりとした音を口から紡ぎ出す。

「──、─────、────」
 キリト達は、全てが異国の言葉で歌われるその曲の意味を知らなかったが、サチの優しく、まるで空間その物に広がるような声で作り出される歌は、それを歌う彼女の心を、聴く者にゆっくりと浸透させていく。

「────、────」
 曲は進む。徐々に徐々に、その推進力を増して……
波立たたぬ鏡の様な湖面であったそれは、風に揺られるようにして、進むにつれ走り出す。
形を持つ。

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