暁 〜小説投稿サイト〜
SAO─戦士達の物語
SAO編
四十八話 路地裏の徴税(恐喝)隊
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 さて、リョウがどうなったかというと……
まぁ、見事に振り切られ……無かった。
一応、レベルを上げる時にも自動上昇値として、ほんの少しだけだが敏捷値が上がる。サーシャのレベルが低かったことも有り、その分で三人に付いて行く事が出来たのだ。まぁ、それでもギリギリだったのだが。
取りあえず、後ろから追いかけて来ている子供たちに追い越されては格好がつかないので、それだけは幸いだったと言えよう。

 いくつもの路地や、店の裏。NPCホームの庭までも経由した結果、やがて三人は一本の細い路地に差し掛かった。
奥で、複数のプレイヤーが道を塞いでいるのが見える。全員が灰緑と黒の鉄で出来た鎧を着込んでおり、《軍》の人間だと分かった。
先頭のサーシャに続き、アスナ、キリト、リョウも路地に駆けこむ。

「おっ、保母さんの登場だぜ」
「……子供達を返して下さい」
 にやりと気味の悪い笑みを浮かべた軍の人間に対して、サーシャが堅い声で言うが……

「人聞きの悪い事言うなよ。すぐ返すって。ちょっと社会常識って奴を教えてやってからな」
「そうそう。市民には納税の義務って奴があるからな」
 この二つの台詞と、甲高い笑い声で退けられた。
サーシャが血が出そうな程拳を強く握りしめ、小さく振わせる。

『お前等公務員じゃねぇだろうに……』
 その様子を見ながら、リョウはそんな事を思う。
無論、この連中相手に、納税の義務は納めた税金が自身の役にも立つ事が前提になって初めて成立する物だとか、そもそもお前等がそんなもん徴収する権利は無いだとか、そんな正論を言った所で会話が成立する訳も無い事は分かっているので口に出しはしないが。
そんな事を考えている内に、サーシャが子供達の名前を必至の形相で呼んでいるのが耳に入った。

「ギン!ケイン!ミナ!!そこに居るの!?」
 軍の連中の身体に隠れて見えないが、路地の奥から、少女の声が聞こえた。

「先生……先生、助けて!」
「お金なんていいから、全部渡してしまいなさい!」
 成程、もしもの時はそうするように言ってあるのだろう。
しかし続いて帰ってきた少年の声は、絞り出すように弱々しい否定の言葉だった。

「先生……駄目なんだ……」
「くひひひっ」
 その言葉を、引きつった様に甲高い下品な笑い声がさえぎる。

「あんたら随分税金滞納してるからなぁ……金だけじゃ足りないよなぁ」
「そうそう。装備も全部置いてってもらうくらいしてくれねぇと、何から……何までってな……」
 そこまで言ってから笑いだした連中を見て、リョウは彼らが何をしているのかを理解した。
装備を解除するのは簡単だ。しかし、それを彼らの後ろに居るであろう少年は「駄目だ」と言った。即ち、恐らく軍の連中は、装備はおろか、来ている服すら……
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ