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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第83話:退院
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ゆりかごを巡る戦いから1か月程経ったこの日、
肋骨の骨折も癒えた俺は退院することになった。
荷物をまとめて病室を出る準備をしていると、不意に病室のドアが開いた。

「お久しぶりです。ゲオルグさん」

そう言って入ってきたのはシンクレアだった。

「久しぶり。入院中は一度も見舞いに来てくれない薄情な後輩に恵まれて
 俺はとっても幸せだよ」

皮肉たっぷりに笑顔でそう返すと、シンクレアは苦笑する。

「皮肉は痛み入りますけどね、ゲオルグさんが離脱してなきゃ俺は
 ゲオルグさんの見舞いに来る時間を作ることができたんですよ」

「はいはい。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんね・・・
 で?お前は何でここにいるんだ?」

「部隊長から副部隊長の出迎えに行けと命令を受けまして」

「なるほど、ではこの荷物はシンクレアが持ってくれるんだな」

そう言って俺は手に持った荷物をひょいと持ち上げる。

「ご命令とあらば」

「では、クロス1尉。持ちたまえ」

「失礼ながら、自分はツァイス3尉です」

真面目な表情で言うシンクレアに、
まだそんな設定が生きてるのかと内心で苦笑する。

「それは失敬、ツァイス3尉」

「いえいえ」

俺はシンクレアに荷物を渡すと1か月間世話になった病室を後にして、
病院の通路をシンクレアと並んで歩く。

エレベータホールについたところで俺はシンクレアに声をかける。

「ちょっと寄るところがあるから先に行っててくれ」

「・・・なのはさんのところですか?
 聞きましたよ、病室でなのはさんを押し倒したって。
 言っときますけど今日はそんなに時間の余裕は無いですからね」

ニヤニヤと笑いながらシンクレアが言ってくる。

「誤解だ・・・と言いきれないところが悔しいな。
 真面目な話、あいつはもうちょっと入院が続くからな。
 ちょっと挨拶してくる程度だよ」

その時エレベータが到着したことを知らせる音が鳴り、
3つあるエレベータのうち1つのドアが開く。
俺とシンクレアは並んで乗り込むと、シンクレアは1階の
俺はなのはの病室があるフロアのボタンを押す。
ドアが閉まると、シンクレアが話を再開する。

「挨拶がわりに一発は無しの方向でお願いします」

「そういう下品なことを言うのはやめてくれるかね」

シンクレアに対しては冗談めかして言うが、実際のところ
俺となのはは所謂そういう行為にはまだ至っていない。
極めてプラトニックな関係を貫いていた。
いろいろあってそんな暇も無かったというのが実情ではあるが。

「それは失礼致しました。で、真面目な話ですけど、俺は先に降りて
 車を正面に回しておきますね」

「了解。頼むわ
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