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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
ソ連の落日 その2
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東ドイツ ヴァンペン・シュトランド近郊
 
 第一戦車軍団の先遣隊は、混乱していた
ソ連KGBの特殊部隊と戦闘中、謎の電波障害が発生し、通信機器が全て機能停止する事態に陥る
戦術機に備え付けられた無線装置が作動しなくなり、ポツダムの参謀本部との通信途絶
すわ、通信妨害かという事で現地部隊の判断で行動が進められた
混乱して投降してきたソ連兵を細引きで縛り上げ、一か所に集める
 ユルゲンは機体を降りた後、混乱する現場の指揮を執った
負傷した兵士を担架で運ぶよう指示を出している時、声を掛けられる
両腕を縛られたソ連兵が彼に向かって、訛りの強いロシア語で呪詛の言葉を吐いた
「お前たちは勝ったと思って勘違いしているであろう……。
だがKGBを舐めるな……、例え風呂場であろうと、(かわや)であろうと隠れても無駄だ。
地獄の底まで追いかけて行って、その首を掻き切ってやる」
 ちらりと、顔を向ける
蒙古系の黒髪で、小柄な男
大股で近づいていくと、酒の匂いがする
先程迄飲んでいたのであろうか……
「今に見ていろ、貴様の妻や妹を散々に可愛がってやるよ。
泣いて懇願(こんがん)する様を見ながら、(なぶ)(ごろ)しにしてやる」
右手で蒙古人の襟首をつかみ持ち上げる
「黙れ、韃靼(だったん)人!」
駆け寄る音が聞こえるが、左手に持ち替えて構わず掴み上げる
「莫迦には莫迦らしい死に方を、してもらわなくてはな」
空いた右手で、自動拳銃をホルスターより抜き出すべく、蓋を開ける
その瞬間、右手が何者かに捕まれた
彼は顔を(しか)めて、振り返る
「離せ、ヤウク。この粗野な男に教育してやるんだ」
何時にない表情の同輩が、立って居た
「ユルゲン、君がその野蛮人と同じ土俵に立って奥様(ベアトリクス)は喜ぶのかね……。
此奴(こいつ)は蒙古人だ。どうせ野良犬みたいに見捨てられて死ぬ運命……。
放っておきなよ」
持っていた左手から蒙古人を突き放す
直後、蒙古人は同輩の顔面に目掛け、唾を吐きかける
野蛮人共(ニメーツキー)が仲間割れか。傑作だ」
そして、不敵の笑みを浮かべた
手前(てめえ)の黒髪のかあちゃんは気に入ったぜ。たっぷりと(はずかし)めてやるよ」
 幼さを残しながら、どこか妖艶(ようえん)な雰囲気を感じさせる()(つま)
末端のKGB兵士が、それを知っているとは……
得体の知れぬ寒気を感じるとともに、全身の血が逆流するような感覚に陥る
蒙古人の方に体を向けるが、背中から両腕を回し、同輩にしがみつかれる
後生(ごしょう)だ、君がこんな蛮人の為に手を血で汚す必要はない」
彼は同輩を振り落とそうと必死にもがく
「離れろ。貴様に……」

 直後、蒙古兵は(はじ)き飛ばされた
口と鼻から血
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