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竜のもうひとつの瞳
第八十一話
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忠義、だけど志半ばで散った主の無念を晴らすのもまた忠義!
アンタはどちらも捨てて自分の復讐を取った! 今のその姿を自分の主に胸を張って見せられるの!?
答えろ、豊臣の左腕、石田三成!!」

 私の言葉に反論することも出来ず、石田はふらふらと二人から離れ、その場に膝を突く。
誰も石田に突きつけなかった現実、これをはっきりと私は目の前に突きつけた。
ショックは大きいだろう……でも、こうでもしないと、間違ったまま突き進んで、間違ったまま終わってしまう。

 無論、現実を突きつけるのは石田だけじゃない。
この戦、何も石田だけが悪者なんじゃない。ここにも悪党と呼べる人間がいるのだから。

 「それにアンタも、ちょっとやり口が汚いんじゃないのかしら。徳川家康」

 「……何を言っている」

 眉を顰めている家康さんに、私は静かに村正を抜く。

 「絆の力で日本を統べる、なんて耳障りの良いことを言っておきながら……どうしてこういう事態になってるのかしら。
……アンタ、本当は知ってたんじゃない? 石田三成がどういう理由で戦を起こそうとしてるのか。
そしてその復讐心を操って大戦に発展させようとしている人物がいることも。
何もかも知った上で東軍を集めたんじゃない?」

 家康は私の問いに何も答えようとはしない。
沈黙は肯定……そう捉えても良さそうだわ。

 「そもそも出だしからおかしかったのよ。
絆の力で、と言いながら石田の絆を最初に絶っておいて、そのフォローもせずに大戦に発展させた。
完全に、とは言わなくても怨恨を残さないように動くことは出来たはずだし、その後の対応次第じゃこんな戦も起こらなかったはずよ。
なのにアンタは何もせずにこの事態を起こした……考えてみればおかしいことだらけなのよ。
豊臣が倒れてすぐ、同盟を根回ししてたでしょ。それも西軍が出来上がる前から」

 私が甲斐にいた時点では、既に強固な軍を作っていると聞いた。
短い間に戦況は大きく変わるとはいっても、日本を二分出来るくらいの大連合軍を作るには少し時間が早すぎる。
しかも分かっていたかのように手際も良いときた。
関ヶ原に来る前の小十郎の反応を見る限りでは、あの段階では西軍はそれほどの勢力にはなっていなかったのではないのかと予想出来る。
大体豊臣はトップが討たれてガタガタになっていたはずだ、西軍を作るどころの話でもなかっただろうに。
だから、大軍を所有する徳川単体の力でもどうにか出来るほどの勢力だったはずだ。豊臣は。
なのに西軍に対抗するための勢力を作ろうした。

 「ちょっと待ってくれよ、小夜さん。それじゃまるで」

 慶次が最後の言葉を飲み込む。
誰もが厳しい顔をして家康を見つめており、家康もまた何も言わずにただ厳しい顔をして
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