第二十一章 それでも顔を上げて前へ進む
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た。
同情心の微塵もない冷たい表情で、宝来暦は見下ろしている。
「ええと、それでなんだっけえ? 『そんな豚みたいな姿で、失礼だろ!』だっけ? うん、確かに失礼だよねえ。お前のその姿がさあ。生き様がさあ。心がさあ! 魂がさああああ!」
恐怖に見開かれる昌房泰瑠の瞳に映るもの、それは、両手で逆さに握った剣をゆっくりと持ち上げる、宝来暦の姿であった。
「わああああああ!」
大きく口を開いて、震える悲鳴を上げる、その口の中へと、剣の切っ先が突き落とされた。
切っ先が口の中を突き刺し、首から突き抜け、突き抜けた先端が、カチリ床を叩いた。
恐怖に見開かれた瞳が、すっかり濁っていた。
光が消えていた。
絶命、していた。
その、死体の胸を踏み付けて、剣を引き抜いた宝来暦は、
「さて、と」
隣に転がっている、康永保江の頭を、強く蹴った。
「がふっ」
「うるさいよ!」
呻き声に腹を立てて、もう一度、頭を蹴った。
康永保江は、また蹴られるかも知れないこと構わず、必死に、首を振り、口を開いた。
焦げてかさかさの唇を動かして、
「お、お前たちのっ、勝ちだ。あたしの負けだ。悪かった」
必死に、かすれた言葉を発する。
「つうかよっ、雑魚ども二匹を殺したのはあたしじゃないだろお! もうかたきは討っただろ! ヨロズとかいう女も、自分で勝手に吹っ飛んだだけだあ! あたしがなんかしたのかおよおお!」
「はあ?」
宝来暦、目が点である。
呆れて動けないでいるのを、弁明の機会を与えられたと思ったか、黒スカートも燃え尽きて半裸も同然の魔法使いは、ちょっと待て待てといいながら、ふらりよろりと起き上がり、
「こいつだあ!」
四肢を切断され人豚状態で絶命している昌房泰瑠の頭を、身体を、蹴り始めたのである。
「こいつだ! こいつだ! こいつだ! こいつだ! こいつがお前らのかたきだあっ」
何度も何度も何度も何度も何度も何度も、蹴る。
もともと半分焼け焦げていたこともあり、蹴った首は、しまいにはもげて、ころころ転がり壁に当たった。
「スットラーイク。バーカ! 地獄へ行けえ!」
元黒スカートの魔法使いは、嬉々とした声を発しながら、自分の蹴った首へと近付いて、さらに、強く蹴った。
もともと脆くなっていたか、昌房泰瑠の頭は、くしゃりとあっけなく潰れた。潰れて、熟れたトマトのように壁にどろりと張り付いた。
はあはあ息を切らせながら、魔法使いたちへと向き直った康永保江。
数秒ほど黙って、肩を上
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