第二十一章 それでも顔を上げて前へ進む
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る昌房泰瑠の、微かな呻き声。
同時に、指がぴくりと動いていた。
横向きに倒れていた康永保江の身体が、ごろりと仰向けになった。
ぜいはあ息をしながら、ぷるぷる震えながら、左右の腕を小さく持ち上げた。
彼女は、目の前に運んだ自分の手を、ゆっくりグーパーさせながら、焦げてかさかさになった唇を動かした。
「まだ……死んでねえ」
「そりゃお互い残念っしたあ!」
ガツ!
宝来暦が、やけくそ気味に叫びながら、康永保江の半分焦げた頭を蹴飛ばした。
「がふ」
起き掛けた康永保江の身体が、また床に転がった。
見ながら、宝来暦はだんと激しく床を踏んだ。
「あたしたち、もう体力なんか残ってないんだ。まだ全然、回復なんかしてないんだ。……だから、一瞬で楽にしてやるとか器用なことは出来ないから、覚悟、決めておきな!」
そういうと宝来暦は、ふらついた足取りで剣を振り上げ、康永保江の背へと、叩き下ろした。
ぎゃう、
と天井貫く凄まじい悲鳴が上がった。
襲うは悲鳴以上の激痛であろう。
ほとんど素肌も同然の、なおかつ背中、なおかつ背骨へと、金属の塊が叩き付られたのだから。
拳を爪が食い込むほど握り締め、顔を歪めて呻く、康永保江の姿。
それに満足した、というわけではもちろんないのだろうが、見下ろす宝来暦の視線、その対象が、今度は昌房泰瑠へと向いた。
「お前はさあ、さっきさあ、ええっと、化皆に、こんなことしたっけえ!」
高く剣を振り上げると、自らの腕がへし折れても構わないというほどの激しい勢いで、振り下ろしていた。
肉が潰れる音。
骨の砕ける音。
不快で不気味なハーモニーが、静かな部屋の中に響いた。
昌房泰瑠の右腕が、胴体から離れて、床に転がった。
凄まじい絶叫が上がるが、宝来暦は顔色一つ変えず、左腕にも同様に剣を振り下ろした。
さらには、
右のももを付け根から。
一度では切断出来ずに、二回、三回、ぶちゅり、がつり。
喚き悲鳴は、まるで断末魔。そんな悲鳴に、まったく顔色を変化させることなく、単純作業的に今度は左のももを、ぶちゅり、がつり。
もともと血液が枯れていたためか、切断面からあまり血は出ていない。
しかし痛みは現実で、傷を押さえて堪えようにも、押さえる腕は既になく。昌房泰瑠は、顔を歪めること、喚くこと、残った胴体をのたうち回らせることで、身に起きている地獄をやわらげようとするしかなかっ
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