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冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その5
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威大将軍(せいいたいしょうぐん)を神聖視する軍人の前で、神輿飾りとまで評した
まだ「神輿に担ぐ」とでも済ませば違ったであろう
神輿ですらなく、それを構成する飾り
しかも、《人身御供》と結論付けたのが不興を買う一因になった
彼の言動は、その様な意味で非常に拙かったのだ……

遠くに居た大使と駐在武官が、此方の方を見ている
脇に立つ東独陸軍少将と通訳も気が付いたようだ


 件の青年が締めくくるように言った
「不合理な二重権威など止めて、その十善(じゅうぜん)の君、御一人にすべきではないでしょうか。
政治の実態は首相が回しているのですから、英国の様に立憲君主制でも良いのでは……」
遠くで見つめる東独軍少将と通訳の顔色が一瞬変わった
彼の君主制を肯定する発言が、不味かったようだ
敢て気にはしなかった
彼は、冷笑する

篁が言葉を選びながら話し始めた
「その……主上(おかみ)より、武家に大政を委任されて800有余年。
三度(みたび)政権は変わりましたが、今の元枢府(げんすいふ)に委任状を出されて、既に100余年になります。
その……、歴史的重みは、簡単には捨てられませぬ故……。
貴方がたの様に、合従連衡(がっしょうれんこう)して出来た国家(ドイツ)とは違います故、簡単な回答は差し控えたいと存じまする」
些か古風な言い回しで、青年に返答した
彼の言葉に、青年二人は酷く納得した様子であった


マサキはその様を見て、ほくそ笑む
これは、上手くいけばこの白面(はくめん)の中尉を利用できるのではないか……
次元連結システムを応用した仕掛け道具でも渡せば、混乱させることも出来るかもしれない
奴等の内訌を利用して、ソ連を破壊させる
恐らく、米国は東欧の軍事力を温存せしめ、BETA戦争の次なる米ソ冷戦再開に備えている
彼等も其れを分かって接触してきたのだ
この若者たちを、戦場で《保護》してやって恩を売って、内訌の足掛かりにする
悪くはない
 
心の奥底にある黒い野望を胸に秘め、彼は椅子に腰かけた

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