暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
ベルリン その5
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 マサキ達は、ベルリン市内の軍事施設に招かれた
当初は、シュプレーヴァルトの森深くにあるグリューンハイデ基地に招かれる予定であったが、政治的横やりで変更になった
その様に、大柄な陸軍中尉が語ったのだ
一同の眼前に立つ中尉は、180センチを超える体躯を持つ美丈夫
金髪碧眼の容姿から、さも神話に出て来るであろう精霊や神々を思わせる様な面
年端の行かぬ頃であれば、妖精や天使を思わせる姿であったであろう……
若干訛りはあるが、聞き取りやすい英語を話す

脇に立つ黒髪の少尉も其れなりの目鼻立ちで背も低くはない
吊るしであろう制服が、体に合っており、胸板も見た所、厚い
ただ、若干落ち着きが無いのは見て取れる
 奥で、大使や駐在武官と話す灰色の髪の少将は、チェコスロバキアの「プラハの春」の弾圧に参加した人物だと事前に教えられていた
受け答えや態度を見る限り、共産主義を金科玉条(きんかぎょくじょう)にする人物ではなさそうだ
 
 しかし、ドイツ語を知らぬ振りをして聞いて居れば、目の前の男達は、随分と物騒な話をしているのが分かる
何やら、帝国の制度について質問したくて仕方が無いのが、あの若い少尉達の様だ
彼は、ここで一つ、その騒ぎに乗ってやる事にした

 (たかむら)巖谷(いわたに)の刀を使った演武(えんぶ)や長剣装備の戦術機の運用方法等を一通り説明した後、東側の訓練方法や実戦経験について1時間ほど討議が持たれた
自在に英語を話せたのは、あの中尉だけで、後は通訳を介して会話となった
ロシア語教育の方が、この国では外語教育の比重を占め、エリートコースにロシア語は必須だ
仮に西側に移った際、ロシア語教師は失職するであろう事が予想される
その失業対策まで考えているのだろうか……
 
 討議は終わると簡単な茶会が用意された
見た事のない焼き菓子やデザートが振舞われる
味は、お世辞にも旨いとは言えないが、市中で買い求めた物よりは数段上
紅茶は、グルジア産の茶葉で、コーヒーは共産圏寄りのインドネシア製であった
見せ掛けだけの為に、物資不足の中で、これほどの物を用意するとは、ポチョムキン村を作って招いたソ連の(ひそみ)(なら)
その様を見て、彼は苦笑した
幾ら政変で議長が変わろうとは言え、上辺だけを飾る共産主義の隠蔽(いんぺい)の構造
これが根本的に変わらぬ限り、この国には未来は無い……

『彼等の目前で、共和国宮殿を焼いてみたら、さぞ面白かろう』
どす黒い欲望が彼の中で渦巻く……

 篁や巖谷と話しているとき、例の美丈夫が声を掛けてきた
詰まらぬ話だと思って、聞き流していたら、驚くようなことを言い放った
「あなた方の国の指導者が、誰か分かりません。
行政府の長である首相か、将又(はたまた)傲慢な王か
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