"Vitalization"
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腰から、着信音が聞こえてくる。
「これは……?」
まだ、辛うじて充電が残っているスマートフォン。電話に出ると、そこには聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『響さん!』
「え? この声……チノちゃん?」
見滝原の一角にある広場。
そこには、チノやココア、まどかをはじめ、無数の見滝原の人々が集まっていた。
少し恥ずかしがりながらも、チノは電話へ叫び続ける。
「あなたの声や勇姿は、ずっとこっちに届いていました!」
チノが見上げるムー大陸。ブラジラが人々を絶望させるためのホログラムとして映し出していたムー大陸内部の映像は、すでに切り替わり、響の姿に移り変わっていた。
チノのスマホに、隣にいるまどかも声をかける。
「今、響ちゃんの姿も、世界中に届いているよ!」
「みんな恐怖を乗り越えました! 自分だけ助かろうなんて考えている人も、絶望している人も、もういません! 響さんが、勇気を見せてくれたから……」
チノは息を吸い込み、もう一度言った。
「命をかけて戦ってると知ったから!」
「響ちゃんには、これだけの人がついている! だから……帰ってきて! 世界中のみんなが、君の帰りを待ってるよ!」
まどかの声。まどかも、か細い声を精いっぱいに振り絞ってだしている。
その近くの屋根の上。誰に知られることもなく、さやかが腰をかけながら、ムー大陸を見上げていた。
「さっさと終わらせてよ。もう、あの大陸も見飽きてきたんだから」
「みんな……」
「……響」
響は、未来と顔を合わせる。
「いつもそうだ……」
未来の後ろに、青い防人の姿が見える。赤い友人の姿が見える。白銀の歌姫が、緑と桃のコンビが。ほくろの科学者が、武術の師匠が、いつも支えてくれる大人たちが。
「こんなに弱い私を立ち上がらせてくれるのは……いつもみんなだった!」
コウスケが。ハルトが。可奈美が。真司が。友奈が。チノが。ココアが。まどかが。
「はあ、はあ、……そうだ……これほど大事なもの……ほかにないんだ!」
もう一度、未来を見つめる。
「だから……だから、この手で守って見せる! 絶対に!」
ムー大陸の外から、声が響いてきた。
ムー大陸という巨大な質量全体を揺るがす、声々。それは、響をヒーローと崇める声だった。
「違う!」
響は叫ぶ。同時にその姿は、ムー大陸のホログラムによって世界中に同時に発信されていた。
「私はヒーローなんかじゃない……ッ! 世界を救う英雄でもない……ッ!」
未来の肩を借りながら、響は立ちあがる。口から血を垂らし、五感もおぼつかないような体でも、響は続ける。
「ヒーローは、この世界に生きる人
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