暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第103話『予選H』
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
中を追いかけた。

滑りやすい道も、隆起した岩場も、多少の段差も、意地だけで何とか乗り越えていく。





──そして、山の中腹辺りまで来た頃だろうか。夏だというのに、少し肌寒い。そう思った瞬間だった。


「あっ……」


張っていた糸がぷつりと切れたように、バタリと晴登は倒れてしまった。何かに躓いてしまったのか? いや違う。これは──『酸素不足』だ。
これだけ高度が高くなってくると、当然酸素濃度も薄くなる。普段よりも少ない酸素量、加えて元より体力の限界が近かった晴登にとって、そこは地獄と相違なかったのだ。


「こんな、とこで……!」


まだ意識はある。が、身体を起こせない。酸素が身体を巡らず、力が入らないのだ。
何とか動かせた首をもたげてみるが、前方に風香の姿は見えない。


──あ、終わった。


ここまで幾度となく、ピンチを風香に助けられた。しかし、もうここに頼みの綱である彼女はいない。それならば、「終わり」だと結論付けるしかないだろう。


「はぁ……何してんだろ俺」


競技への熱が冷めていく。あれだけ息巻いていたのに、一度倒れただけで心が折れてしまった。何でこんな過酷なレースに参加してたんだっけ?

あぁ、このまま眠ってしまいたい。疲れているんだ。それくらい許されても良いじゃないか。ゴツゴツしてて寝心地は悪いけど、眠りにつけばどうせ気にならなくなる。


『……!』


何か、聞こえる。でも遠くて聞き取れない。


『……と!』


何だろう。もしかして救急隊とかだろうか。確かに倒れた人がいれば、彼らの出番だろうし。


『ハルト!』


「──っ!!」


その言葉がハッキリと耳に届いた瞬間、ハッとして晴登は無意識に顔を上げた。


──誰もいない。


いや、でも間違いなく今のは結月の声だった。一体どこから? この辺にいるはずだが……。


「幻聴か……」


そう思うと、笑いが込み上げてきた。
まさか幻聴まで聴こえてくるとは。やはり相当疲れているようだ。早く休んだ方が良い。それなのに、


「……諦めて、たまるかよ」


幻聴だろうと何だろうと、他でもない結月の声を聴いた。だったら、このまま地面に突っ伏している場合ではない。


──何のために走るのか。


晴登には仲間がいる。背負っている想いがある。それだけで、立ち上がる理由になる。


「一人じゃ、ないから!」


晴登は気力と根性で身体を起こし、立ち上がった。しかし限界はとっくに迎えている。気を抜けば頭から倒れそうだ。
だからこそ、それを防ぐように一歩を踏み出す。倒れる前に一歩。倒れる前に一歩。そうし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ