第十章 とあるヴァイスタの誕生と死
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の責任だと思っている。
父の死は、自業自得というものであろう。妻を信じられないどころか殺めてしまったのだから。あまつさえ長女までをも。
何故、自分の責任と思うかであるが、ただ怯えているだけで戦わなかったからだ。守ろうとしなかったからだ。
なんの罪もない母と姉が、殺され掛けていたというのに。
自分はまだ四歳であり、仕方のないこととも分かってはいる。
忘れなければならないということも、分かってはいる。
そう。忘れなければ、前に進めない。
でも、自分を自在にコントロール出来るくらいなら、こうして悩まない、あんな夢など見ない。
今回の夢のように、否が応でもたまに思い出してしまい、正香はその都度、最悪な精神状態の底の底まで落ち込むのである。
窓から視線を戻し、今度は机の上に立てられている写真を見る。
つい先日の、学校での合宿時に撮影した、成葉や治奈などみんなと写っている写真。
その横には、もう一枚写真が立て掛けられている。
十年以上も前の、母と、姉と、自分と……
そして……
びきん、と頭の中にヘラを突き刺され掻き回されたかのような激痛に、正香は頭を抱えて、くぐもった呻き声を発し、襲う苦痛に顔を歪めた。
2
踵を軽く浮かせ、つま先で身体を支えながら、二人が向き合っている。
反対側の壁に立っていようとも息遣いがはっきり聞こえそうなほどに、しんと静まり返った空間に。
二人とも、剣道の防具に身を覆っている。
竹刀の先端が触れるか触れないかという距離を取ったまま、双方ピクリとも動かない。
二人の身体の大きさは、これで公平な勝負になるのかというくらいに違う。
それでも二人は、どちらがどうということはなく、ただ、被った面の奥から相手だけを見つめ、竹刀を突き合わせ向き合っている。
微かな息遣いとともに。
ここは、大鳥家の敷地内にある稽古場だ。
大鳥正香が、叔父である大鳥道彦に朝の稽古をつけて貰っているところである。
正香は、中二の女子としてはごく平均的な身長であり、対する道彦は男性として見ても少し大柄。だから、この不公平を感じさせる身長差も、当然なのであるが、
しかし、道彦は容易には動かない。
姪が最近、めきめきと実力を付けてきているのを、分かっているからである。
以前は、わざと無防備に前へ踏み出すことで、動揺して大振りで挑んでくる正香の竹刀を、簡単に弾き飛ばしていた道彦であるが。
現在の二人に、実力差はほとんどない。
ほんのわずか、道彦の方が上ではある。
ただし、動かずぴたっと静止
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