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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(中)
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とはいえもちろん、だからと言って一般的な民主共和制の元首であるというわけではない。
 アルレスハイムの政治学者のエプレボリ教授は『我らが同盟において我が国を立憲君主制であるとされるのならばヴァンフリートは唯一の選挙君主制国家であろうぞ』と冗談を飛ばしたこともある。
 その冗句は彼の見識より出でた者であるのは間違いない。

 人民元帥が強力な権限を持っているのは事実である、当然の事として国軍の指揮権、そして両院の議会を解散する権限、法案・予算・条約批准の是非の議決に対する拒否権(ただし、議会が3分の2以上の多数で再可決をすれば覆される)
 予算の増額調製と執行権、人民政府中央委員会とそれを構成する中央官庁への人事権に最高裁判事の指名権。
 そして何より強力なのが人民元帥専決処分権である。議会を招集する時間的余裕がないと認められる場合など、独自の判断で人民元帥令を制定し事実上の立法、予算の調整、執行、行政機関の設置、戒厳令の発動などを行うことができる。――太平の世においては政権の正統性を維持する為の象徴であり、対外的な代表として遇されていたが、ダゴン以降は徐々に革命当初の緊急事態における指導者として権威と権限が再集約され、とりわけこの半世紀――イゼルローン要塞という橋頭堡を帝国軍に作られて以来は最高指導者として独裁官の役割を名実ともに掌握している。
 そしてそのような強権を持つ地位に対して被選挙権を持つのは原則としてヴァンフリート人民防衛軍中将の位に就いているものだけであるのだ。
 ――閑話休題――

「ヴァンフリートの【国防民主主義】は面倒な仕組みです、とりわけ理解を得るには」

 【国防民主主義】はヴァンフリート革命後の非常事態を収拾する為に唱えられた理論である。要するにローマだって非常時には独裁官を置いているじゃないか、という事である。
 そしてその【国防民主主義】体制を支え、他国から見ると難解にさせる組織が【労兵評議会】である。
 上院にあたる【人民元老院】は地方自治機関から選出された将校相当官、公社管理職などによって構成されており、原則として人民元帥の諮問機関としての色が濃いが、下院はその名の通り「労働者と兵士の議会」として高度な独立した権限を持っているのである。
 これは革命の美風といえば聞こえがいいが悪く言えば【将校と兵士は別の世界を築く】という軍事的な風習を維持したまま革命の大義と軍の在り方を両立させるための妥協といえる。つまりは上院は地方行政の代表であり、下院は労働者と兵士の代表(国家行政経験者は立候補できない)という奇妙な風習があるのだ。

「だがまぁそれはいい、今更だ、革命防衛連合とどこを組ませるかだ」

 革命防衛連合はこれまで幾度か名前を変えている(最初の創設時は革命労兵党であった)が建国から5世紀
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