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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(中)
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通の担当が入れ替わるでしょう」

「そうか、そうか、そうか」
 モハメド・カイレの目に一瞬熱が宿った。情報交通委員会は星間航路開発を一手に担っている。【交戦星域】でなくとも注目するのは当たり前であるし、戦場清掃や航路保安を収入源としているヴァンフリートであればなおさらだ。

「ホアン・ルイはいまエルファシルにいます、彼がこちらで動いているという事は何か労農連帯党も掴んでいるのでしょう」
 イロンシは同盟弁務官としてもとめられている情報をつなぎ合わせてロジックを紡ぐ。合格点を得られなければどうなるのか、という恐怖を押し殺しながら。
「年明けの同盟下院選挙、既に水面下で動いています。我々も明日の大将閣下が何を仕掛けてくるのかを探るべきです。そしてそれが誰なのかを。シトレの裏にレベロが居るのか、あるいは別の何者か。もしくはヨブ・トリューニヒトか、さらにその裏にサンフォードかカーティスがいるのか」
 イロンシは、内心では汗が流れぬよう顔色が変わらぬように祈っていた。軍の部隊を率いて兵士らの命を預かるのとは違う、何が正しいのかもわからない政治の舵切りを今、自分は献策している。最高指導者の視線は自身の皮膚を透かし、その中を覗こうとしているかのようだ。

 最高指導者はよろしい、と頷いた。
「あぁいいだろう、参考にしよう、下がれ」
 イロンシが敬礼をし、執務室を出ようとすると彼は既にほかの幹部を呼び出す為か通信機に手をかけていた。
 部屋を出ると溜息を吐いた、いつの間にか息が詰まっていたようだ。
 ――なるほどモハメド・カイレ閣下は紛れもなくこの国の最高指導者である。本来なら人の居住など考えられない、何もかも不安定な星系に暮らし、敵の侵攻に備え、遠く遥かなバーラトに神経を張り巡らせるこの非現実的な国の――自分は後継者として名乗りをあげるべきなのだろうか。

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