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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
アスカリの持ちたる国〜ヴァンフリート民主共和国〜(下)
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「あぁ、そうだ。すまないが出征には立ち会えないよ、だがヤン提督とお前の手助けになるかもしれない、まぁそういう意味もある」

「――いやいや、流石にそのようなことはないさ。これは政府と軍首脳部が決めたことだ。
ロボス閣下もトリューニヒト委員長も同盟が滅べばよいだなんて思っているわけではないさ」

「上手くいかないと思っているからこその親切だって?
ハハハハハ、作戦の前にそれだけ言えるならお前も立派な同盟軍人さ。それなら彼らの鼻を明かしてやれ。あぁお休みフレデリカ」

「――さて」
 娘との通信を切ると、グリーンヒルは宿泊しているホテルの窓から外を見る。
 小惑星をくりぬいて作られた『マンデラ』に夜はない――わけではない(マンデラ標準日時に合わせて照明が調整されている)がその喧騒はやむことはない。
 解体が行われている区画から離れていようと今度は軍将校達が昼夜交代で動き回っている。

 エル・ファシルで妻と出会ったのが切欠だった。ハイネセンで勉学に励み、中央官庁と正規艦隊(レギュラーズ・フリート)とを往復していた自分が【交戦星域】の住民と顔を合わせるようになった。
 性格の合わないロボスと組む事もそれが原因であった。彼は幼少の頃に両親に連れられ亡命した母が住まうアルレスハイム王冠共和国で生まれ、両親の仕事の都合でハイネセンに転居している。
 出会った経緯から【里帰り組】とあだ名されたことで妙な結束ができてしまった気がするな、と苦笑する。そして――地方駐留艦隊を経験した者達や構成国軍と意見を交換するようになったグリーンヒルは独自の人脈を築き上げた。
 中には士官学校卒業成績(ハンモックナンバー)で主流から弾かれていても”使える”人材も居た。

 大将となり、艦隊司令長官となったロボスはグリーンヒルを総参謀長に指名した。ハイネセン育ちの穏健派でありながら地方出身者と縁が強く【交戦星域】との交渉に強いグリーンヒルが統合作戦本部の宇宙軍担当次長となる事をシトレも歓迎した。
 グリーンヒルは二人の上官に望まれた通りの仕事を成し遂げた、【ロボスの演習計画】は構成軍、警備艦隊と正規艦隊(レギュラーズ・フリート)との合同演習や任務支援を年間を通して行うことで密接な情報共有と連携により通商破壊部隊――正式に言うのであれば貴族が雇った【傭兵】や非主流派平民将校の【私掠部隊】――の駆逐に成功したからである。
 望んだ昇進は叶った。だがその理由は皮肉なことに本人が望む艦隊決戦ではなく組織運営者として評価されたことであった。彼の昇進は珍しく【民主主義の縦深】労農連帯党右派と自由党系会派に国民共和党の地方党人派という対立の多い3会派の合同推薦によるものであったのだ。

 【交戦星域】! 自由惑星同盟軍の兵にとっては身近な存在であり
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