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戦国異伝供書
第百話 両翼を奪いその五

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「毒を盛ろうとしたが」
「それは、ですか」
「あの者に見破られてな」
 そうしてというのだ。
「しくじった」
「左様でしたか」
「そしてこちらがしてくるならな」
「相手もですか」
「特に追い詰められた者はな」
 まさにというのだ。
「藁にもすがる気持ちでな」
「仕掛けてきますか」
「そうしてくるわ」
「だからですな」
 元春も言ってきた。
「我等は」
「そうじゃ、用心してな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「我等としては」
「戦に挑みこうしてな」
「普通にしていても」
「用心しておくことじゃ」 
 まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それでな」
 まさにというのだ。
「ことを進めるのじゃ」
「それでは」
「尼子家は謀略は不得手ですが」
「不得手でも謀略は謀略じゃ」
「油断出来ませぬな」
「流れ矢が当たり死ぬ者もおる」
 何でもないそれにというのだ。
「だからな」
「気をつけるべきですな」
「左様、流れ矢にも注意してよけるか防ぐもの」
「ならば謀も」
「それが謀であるならな」
 如何に不得手な者が使った不出来なものでもというのだ。
「用心することじゃ」
「そういうことですな」
「では父上」 
 隆景も言ってきた。
「飲む水も」
「飯もな」
「常にですな」
「気をつけておれ、それでじゃ」
「それでとは」
「お主達にこれを渡す」
 こう言ってだ、元就は。
 三人にあるものを出した、それは銀の球だった。
 それを三つ出してだ、彼等に言った。
「これを常に持って水を飲む時や飯を食う時は近付けよ」
「銀の球を」
「これをですか」
「水や飯にですか」
「異朝では銀の皿を使うというが」
 息子達にこのことから話した。
「贅沢の為ではない」
「そういえばですか」
「異朝の書には出てきますな、銀の皿等が」
「何故かと思っていましたが」
「それは確かに贅沢の為であり」
 この理由もあってというのだ。
「そしてな」
「さらにですか」
「もう一つ理由があり」
「毒にもありますか」
「左様、まあ溶かして逃げる時に持って行って後で戻すということもあるが」
 それに加えてというのだ。
「銀は毒が近付くと曇る」
「それで毒がわかる」
「水や飯に毒が入っていると」
「それで、ですか」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「常にこれを持ってな」
「毒を確かめ」
「そうしてですか」
「それから口にせよというのですな」
「用心にな」
 まさにその為にというのだ。
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