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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第八十一話 六芒郭顛末(下)
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巻いた。

「帝室の嗜みよ。そんなことよりこれの次席指揮官は誰?」

「自分がその代行ということになります。殿下、怪我は?」
 溜息をつき、大辺中佐が前に出た。
「こちらは軽傷、私の参謀長は深めの刀傷。あなたたちの指揮官は体を打っただけよ、動くと痛むようだけど重症ではないわ。
――後は忠勇であった者達がここに眠っているだけよ」
 経緯をこめて大天幕の布地に滲む赤黒い染みを撫でる姿はまさしく望まれた君主のそれであった。
 だが馬堂大佐も大辺首席幕僚はそれに敬意は払っても感銘を受けるつもりはない。これも交渉の一環であることを理解しているからだ。
「殿下の把握する状況をよろしければ」

「‥‥東方辺境領軍の大半は南北に散っている。私の手元にある忠実な部隊は貴方たちが蹴散らしてくれたようね。
それに身動きが取れない状況にあるみたい、手を回された可能性がある」

「なるほど、それで殿下。ウチに降伏しませんか?」
 そういいながら馬堂大佐がよろめきながら立ち上がる。
「ほう、指揮官が私に命を救われた部隊に降伏するのか?」

 なるほど、道理ですなぁ。と豊久は苦笑いしつつ大辺に手を振った。
「では近衛に降伏なさるといい。近衛総軍は皇主陛下直属の軍。すなわち皇主に直接降ることになる」
 その方が良いでしょう、との言葉にユーリアはにこりと微笑を浮かべた。 
「ふむ、そうくるか。決めた、貴様に降伏しよう」

 
「東方辺境領姫に二言はないと聞いておりますが」

「貴様には降伏する理由を問うただけよ。出そろう前に決断を下したことにするのは佞臣のすることよ」
 ふぅ、と溜息をつき蜂蜜のような髪をゆらす。
「つまらぬ幕だ。残念ながら私が泣きながら見送ることもできぬし、貴様が勝ち誇ろうにもその様ではどうにもならぬ。貴方の言い方を借りるのならこんなつまらない博打にすべてをつぎ込むつもりはないの」

「わからない、わからないなぁ。近衛でも構わないでしょう、いや、その方が制約も少ないはずだ」
 豊久が瞼をもみながら尋ねる。

「そうねぇ、でもねぇ」「なんですか」

「この選択はどちらに転んでも貴方達は私もクラウスも道具にするじゃない。ならば面白そうな方に賭けたっていいじゃない」
 意味わからん、と豊久が唸るのを見てメレンティンが微笑を浮かべた。 
「だそうですぞ、馬堂殿。貴方はお気に入りですからな、私の次に」

「メレンティン殿も大変ですな」「いえいえ、殿下は貴方が困るのがお気に入りなのですよ」

「ひどい」「そりゃ酷いわよ、貴方達の国を鎮定しにきた軍の司令官だもの」
 失脚し、敵の手に墜ちたというのにからからと笑っている。この姫様は豊久にとっては理解を超えた存在だ。
 器量の問題なのか価値基準の問題なの
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