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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第28話 レイセン一世:後編
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は結論を率直に述べた。
「この勝負、私の負けですね……」

◇ ◇ ◇

「うう〜っ☆」
 勝負が終わった後、勇美は頬を膨らませながら唸っていた。
 その様子は見ていて愛らしいものがあるのだが、当然そのままにしておくにもいかないので鈴仙は彼女に声を掛けた。
「勇美さん、機嫌を直して下さい。いい勝負でしたから」
 という言い方も上から目線になるなと鈴仙は思いながら言っていた。いい勝負どころか、自分が勝てた事すら紙一重の勝負だったからである。
「だってぇ〜。これじゃあ見事な『策士、策に溺れる』って形で格好悪いじゃないですかぁ〜」
 頭を抱えながら項垂れる勇美。やっぱり小動物みたいで可愛い。鈴仙は自分が兎である事を棚に上げてそう思ってしまった。
 しかし、そのままにもしておく訳にもいかないので鈴仙は勇美に声を掛ける。
「いえ、勇美さん。あなたの弾幕、見事でしたよ」
「そ、そうですか?」
 鈴仙に言われて、勇美は少し晴れやかな気分となる。
「そう言ってもらえるなら、成功だったんですね」
 勇美はそう自分に言い聞かせた。
「鈴仙、今の貴方の心構え、見させてもらいましたよ」
 勇美と鈴仙の間に依姫が入って来た。
「依姫様……」
 鈴仙は今、かつての師にずっと勝負の行方を見守られていた事を自覚して呆けてしまった。そこに依姫は続ける。
「見事です。今の貴方には立派な仲間がいる事が分かりました」
「はい……」
 そう依姫に言われて、鈴仙は声は小さくだが力強く返事をした。
「勇美も私の我がままを聞いてくれてありがとう。今の鈴仙の事を分かれたのは貴方のお陰よ」
「お役に立てて光栄です♪」
 勝負には負けたけど、自分はしっかりと役に立ったのだ。ここは堂々と胸を張る事にした。
 そして、勇美は再び鈴仙に向き直る。
「鈴仙さん、素晴らしかったです。あなたの仲間を持っている事が生む力、私も噛み締めさせてもらいました」
「ありがとう、勇美さん」
 勇美に言われて、鈴仙は少しはにかみながら微笑んだ。
 そして、鈴仙がそうしている間、勇美は何やらもじもじした様子を見せていた。
「どうしたの、勇美?」
 それに気付いた鈴仙は勇美に呼び掛ける。
「あ、あの、鈴仙さん……」
「……何?」
「こ、これから私の事も『仲間』だと認めてもらっていいですか?」
 勇美はこそばゆい気持ちから言葉を詰まらせていたが、ここで漸く気持ちを踏み切って言いたい事を切り出せたのだった。
 それを聞いて鈴仙は一瞬呆けてしまう。が、すぐに気持ちを整理して勇美に顔を合わせて言った。
「もちろんですよ。勇美はもう永遠亭の家族で、仲間なんですから♪」
 と、鈴仙はここ一番の笑顔でそう言い切ったのだった。
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