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おじさんのバレンタイン
第三章
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「ないだろ」
「見事にないですね」
「新聞や雑誌が安くなる訳でもテレビの電波料金が安くなる訳でもないし」
「いいことないですね」
「あれだけ優勝に意味ないチームないですね」
「むしろ最下位だったらな」
 巨人には最も相応しい順位である、球界を蝕みそのうえで戦後日本のモラルの絶望的な低さを象徴するこの忌まわしいチームには。
「いいな」
「ですよね」
「巨人が負けるのを見ると自然と力が出ますから」
「それに尽きますよね」
「巨人は優勝するよりも最下位の方がいいですね」
「その方がずっといいですね」
「日本の経済にとっても」
「巨人が負けるのを見ると日本人は元気が出てな」
 そうしてというのだ。
「仕事も頑張るだろ」
「そうですよね」
「それがいいんですよね」
「俺達もそうなりますし」
「巨人が負けるとご飯も美味いですし」
「仕事にも頑張れて」
「それで日本の経済がよくなる」
 山田は今度は断言した。
「だから巨人は最下位の方がいいんだ」
「ずっと最下位になって欲しいですね」
「どうせなら原さんじゃなくてフロントが監督やって欲しいですね」
「素人が采配執って欲しいですね」
「そうしたら絶対に今より酷くなりますから」
「ああ、元自称番長が終身監督になってもいいがな」
 間違いなく酷い采配を執るからだ。
「しかしな」
「あのフロントが現場も完全に仕切ったら」
「余計にいいですよね」
「原監督よりも」
「ずっといいですね」
「どうも原さんは叩きにくいしな」
 山田は個人的な感情も述べた。
「しかしな」
「あのフロントならですね」
「思いきり叩けますね」
「そう出来ますね」
「だからな」
 それでというのだ。
「巨人はそうした人事して欲しいな」
「ですよね」
「巨人が弱くなる為にも」
「そうなって欲しいですね」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 山田は部下達と書類仕事を楽しみその後で肉体労働に出た、彼は今日も仕事でいい汗をかきその後もだった。
 行きつけのジムで汗を流した、酒はその後だった。そうした健康な日々を送り。
 バレンタインの日になるとだ、朝から学生達の賑わいを見たが無反応だった。しかし。
 通勤の道の途中にある小学校の校門で小学五年か六年と思われる眉目秀麗と言っていい男の子が同年齢の女の子達から次々にチョコを貰っているのを見た、見れば。
 その男の子は近所の横山信吾だった、山田は彼に気付くとだった。
 挨拶をしようと思ったが丁度女の子達が去り少年だけになると少年は山田に礼儀正しく挨拶してきた。
「おはようございます」
「おはよう」
 山田は彼に微笑んでいつも通り挨拶をした。
「今日も元気そうだね」
「はい、ただ今日は」
 少年は自分の
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