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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
これにて、一件落着──?
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と──ありがとうっていうのは言いきれないくらいだけど、同じくらいに、彩斗の先を狂わせちゃった気がして……。でも、ありがとうっていう気持ちに比べれば、こんなくらいの傷なんて──大したことじゃないから」


その刹那に、心臓を握り締められたかのような錯覚に襲われた。同時に、銃弾に撃ち抜かれたかのような錯覚にも襲われている。そうして滔々と迸る血潮と一緒に、今の今まで刺さっていた微細な硝子片は、何処かに抜け落ちていってしまったらしい。心臓も咽喉も、すべてが随喜と艱苦がごっちゃになったような──そんな感情の権化、圧力に押し潰されかけていた。

そうして、自分がどうしてアリアを護りたいと思ったのか──同情という感情の裡面に潜んでいた、その要因なるものもまた、分かってしまった。気位に満ち満ちた彼女がときおり見せる優しさだからこそ、自分はそれに惹かれてしまっていたのだろう。彼女のその感情こそを護りたくて──或いは、自分が無意識にその感情を受けたくて、必死に神崎・H・アリアという眇たる一少女、存在のそのものを護ろうとしたのかもしれない。それは恋情とも愚蒙とも呼べてしまった。


「だから、これだけはアタシの口から言わせて」


すぅ──と吸い込まれていく吸息の音色は、彼女の口元のあたりを彩っていく。更には彼女の口腔から咽喉、肺胞に至るまでの全てを満ち満ちさせていった。そんな充足の最高潮から僅かを挟んで、アリアは笑みとともに心情の吐露──告白とも言える本音を零したらしい。
「これからも、宜しくね。パートナーさん」
「……うん、こちらこそ」
──嗚呼(あぁ)。だから彼女に、恋情を抱いてしまったのだ。つられて零した自らの笑みの、その裡面に潜ませた愚蒙……換言するならば恋情を、この刹那に初めて、自覚したのだ。

そうして同時に、今の今まで幻視すらも適わなかった朧気な靄が、次第に濃度を増して眼前に浮かび現れてきたように感じている。この感情を前にして、彼女とどう接していけば良いのか──はたまたこの関係が何処まで続くのだろうか、そんな具合の想いが、胸臆に鎮座してきた。
それ以前に、不思議で仕様がないのだ。この現実を無為無聊だとして半ば強引に打破し、生家を後にして武偵となった過去がある。そうして、自分の思う非日常に足を踏み入れた。 一般の掲げる現実を俯瞰したために、恋情などという感情を抱くことはなかったのだろうか。

即ちそれは、平々凡々な現実世界に居る異性には恋愛感情を抱くことは不可能だ──と述べているのと同義ではないだろうか。アリアは非現実世界に居る武偵であるのだから──即ち、非日常に足を踏み入れた異性であるのだから──自分は彼女の存在にこうして惹かれ、恋愛感情すらをも抱いてしまったということなのだろうか。その論調の精度は、自分には分から
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