風前の灯、少女達の戦い (前)
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のか。
そんな彼女達に、アルトリアが微笑む。
「イリヤスフィール」
「……? え、セイバーさん……?」
「私と仮契約をしましょう」
アルトリアの突然の誘いにイリヤは眼を剥いた。
だがイリヤよりも驚いたのはアグラヴェインである。イリヤらは、英霊召喚システムによって迷い込んできた故に、生者でありながらサーヴァントの霊基を持つ。サーヴァント同士が仮とはいえ契約できるものなのか?
例え出来るとしても、何故アルトリアはそこまで小娘を買うのだろう。
「陛下、それは……」
「彼女には戦う覚悟がある。それを無下にしたままなのはいただけない。それに私はサーヴァントだ。マスターが近くにいなければ充分な力を発揮できない。イリヤスフィールは仮染とはいえサーヴァントだが、霊基はキャスターだ。カルデア内部の極限られた時間内なら出来ないものではないだろう」
「……しかし……いえ、御身がそのような眼をした時、私の進言が容れられた事はありませんでしたな」
「すまない、アグラヴェイン卿」
呆れ気味のアグラヴェインに、アルトリアは穏やかに謝意を向ける。
そうしてすぐにアルトリアはイリヤを見据えた。透徹とした眼差しが、平凡な少女を捉え。そしてイリヤは、その目から逃げなかった。
「貴女にはマスターの資格がある。魔力でも、武力でもない。諦めない心、それを持つ貴女になら剣を預けられる。私と仮契約していただけますか?」
「私で……いいんですか?」
「ええ。私のマスターはシロウだけだ。だからこれは一時のみの仮契約。人理を守護せんとする志を同じくするなら、共に戦うことに否はありません。さあ」
「……はい! よろしくお願いします!」
「ふふ。そう固くならないでも大丈夫ですよ」
穏やかに、優しく、そして導くように手を差し伸べる騎士王に、イリヤは勇気が百倍する心地を得られた。この人がいるなら大丈夫――士郎に感じたものにも負けない安堵感がある。これが、一国を統べた王のカリスマというものなのだろうか。
手を取ると、何かが繋がったような気がして。イリヤの手に令呪が現れる。左手の甲に現れた刻印を抑えて、イリヤは決然と奮い立った。
「サクラ」
「……」
「いいえ、ランスロット卿」
そして騎士王は桜の元に片膝をつき、彼女と目線の高さを合わせる。
桜は眼を逸らそうとしたが、彼女の中の霊基の影響だろうか。不思議とアルトリアの目から逃れられない。吸い寄せられるように無言で己を見詰める少女を通して、アルトリアは万の信頼を込めて告げるのだ。
「サクラを守りなさい。卿ならば問題なく務められると信じている。サクラを守り、カルデアを守る。卿ならば容易い事だ。卿の剣を、頼りにしている。何時かのように、私の背中を預けよう」
「……」
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