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人理を守れ、エミヤさん!
「封鎖戦域クイーンアンズ・リベンジ」
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いつは過ぎたもんだ。宝具による再生でも、魔術の治癒でも、ましてや自前のスキルによるものでもあるまい。いるはずだ、テメェをなんらかの外法でバックアップする輩が。ソイツは何者だ?」
「……?」

 クー・フーリンの詰問に、アルケイデスは心底不思議そうに静止した。
 敵にそれを明かすとでも? そう返すのが道理であろう。しかし――アルケイデスの様子は、今一思い当たる節がないかのようで。
 殺意、赫怒、嘲り、侮蔑。それらしか復讐者へ抱く感情(もの)の無かったクー・フーリンをして、それは。

「……哀れなもんだ」

 只管に、無様に過ぎ。例えようがないまでに、姿のない敵首魁への憤りを湧かせる。

「貴様の剣には決定的に『自我』が欠けている。道理でその剣に重みを感じねぇ訳だ」

 本来のアルケイデスなら、或いはヘラクレスなら、今の射殺す百頭を無傷で躱し切れはしなかっただろう。

「重みだと?」

 怪訝そうに、アルケイデスも応じる。その目はクー・フーリンに向けられているが、油断なく周囲のサーヴァントも視界に入れ、結界を背にして死角を潰している。

「おう、それが正であれ負であれ、己の技には宿るものがある。誇り、信念、決意――なんでもいいがよ、己の行いに懸ける意気込みって奴は、どうあれ一撃を重くするもんさ」
「くだらんな。そんな精神論が、物質にどう作用するという」
「自分でも分かってんのに訊くんじゃねぇよ。己から湧いた熱がない、さしづめ貴様は操り人形ってとこか。誰に聞いたって貴様の有り様をこう評するだろうぜ――無様極まるってな。己の名と矜持を腐らせる前に、此処で大人しく死んでおけ」

 それは英雄が英雄の反転存在に向けた、唯一の同情だった。
 アルケイデスは剣先を一瞬下ろす。しかしすぐに剣を持ち上げ、心底から可笑しそうに嗤った。

「……熱がない、操り人形か。そうだろうとも、私は確かに醜態を晒している。ギリシャの神の悉くを滅し、神性を持つあらゆる存在を駆逐したい――それは忌々しいヘラクレスすらも、その腹の底に抱く復讐の火種だ。故に私が復讐の決意を固めるのは何もおかしくはない。だがどうだ? どうした訳か今の私は『貴様らに復讐したい』等と戯けた感情を懐いている。こんな私の物ではない復讐心で振るった剣に、重みなど宿るはずもないだろう」
「気づいてやがったか」
「当然だ。私の復讐は私のものでしかない。何者であろうとこれを歪める事など出来ん。指向性の歪んだモノで、私を操ろうなどとは侮られたものだが……なんであっても、お前達が私の敵である事実に変わりはあるまい。ならば討ち果たさずしてどうする。敵として相見えた以上は、どちらかが果てるまで戦うのは必然だろう」
「そうかよ。ヘラクレスなんざどうだっていいが――アルケイデスと名乗った
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