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3章 穏やかな日々
29話 あの日の出来事
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 あのデュエルから一週間ほどが経ち、アインクラッドは再びいつも通りの日常へと戻っていた。特にない日々。かくいうリアとツカサもその中の人間であり、普通の朝を迎えていた。だが、全員が全員、そういうわけではなく、普通ではなくなった人間もいるわけで、それは2人にとって身近な人物だ。もちろんのこと…

「キリト、まだエギルのところにいるのかな?」
「じゃないか?なんかすでにあの家は自分の物みたいになってるからな」

 穏やかな朝食の席で、ツカサはリアの淹れた、恐らくこの世界ではとんでもなく価値のあるコーヒーをすすった。もしこれをオークションにかけたら、いったいいくらするのか、ツカサも見当がつかない。


「そろそろどんな暮らしをしてるのか覗いてみますか!」
「まるで母親だな」
「まま、いいじゃんいいじゃん、どうせ暇なんだし」


 こうして、今日の予定はエギルの店の二階に現在住む住人を訪れることになった。



―?―?―?―?―?―?―?―?―?―


「こんにちは、エギル」

 リアがそう言いながら扉を開けると、カウンターの奥には巨漢黒人スキンヘッド、この店の店主であるエギルがいる。彼はこうして店を営んでいるが、攻略組の盾装備(タンク)部隊に欠かせない人物でもある。

「よぉ、リア、ツカサも。久しぶりだな。あのデュエル以来か」

「だね〜」

 リアの後ろにいるツカサも手を上げてエギルに挨拶をした。

「キリトのやつはまだ二階にいるのか?」

「ああ。今アスナも来てるぞ」

「「……」」

 リアとツカサは無言で顔を見合わせた。

「ありがと、エギル」


 リアはそう言い残すと、2階へと続く階段へ足を踏み入れた。



 部屋のドアを数回ノックする。

「キリト、アスナ、リアだけど」

 扉がすぐに開き、目の前に立っているのはアスナだ。いつも通り、おめでたカラーの制服に身を包んでいる。

「リア、久しぶり。…ツカサさんも」
「まだ一週間ぐらいしか経ってないけどね」
「…やあ」


 だが、部屋の中には、一部の人の間で黒尽(ブラッキー)くめと呼ばれるほど、いつも真っ黒なあの人物はいなかった。いるのは入って左奥に或る簡素なベッドに腰を掛け、頭を抱える一人の黒髪少年。着ている服は、アスナと同じ血盟騎士団の制服のようだ。


「…もしかしてだけど」
「…もしかしてだが」

「「…キリト?」」

 見事にシンクロしたリアとツカサに、その人物は顔を上げる。途方もない仕事の残業を終わらせた後のような、ひどくげっそりとした顔だ。


「めちゃくちゃタイミングよく来るよな…」

 キリトはほぼ溜息といっても過言でない言葉を発した。その中には若干
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