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人理を守れ、エミヤさん!
人理守護戦隊エミヤ(後)
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醇に感じられた。知らず、呻いてしまう。

「……中々やる」

 調理には一家言あるエミヤをして、そう溢さずにはいられない薫りだ。たかが匂い如きと侮るなかれ、見た目、味と同じぐらい薫りも料理には大切なものなのだから。
 この濃厚な薫りからして、作られているのはシチュー辺りかと予想する。そして改めて厨房の中を覗き――絶句した。そこに立っていたのは、事もあろうに、

 衛宮士郎だったのだ。

「――貴様、何をしている」
「あ、エミヤさん」

 エミヤの声音に怒りが滲む。
 ん? とこちらを振り返った男の傍には、熱心にメモを取るエプロン姿のマシュがいた。そして白い割烹着を着た桜が士郎に肩車されている。付け加えるなら、そんな桜の頭の上には一匹のモコモコがいた。
 モコモコは全身をビニール袋で包まれていた。露出しているのは白い四肢と、顔だけである。非常に愛らしいエプロン姿とでもいうべきか。

 マシュが軽く会釈をしてくる。それに目礼のみで応えた。

 昏睡状態に在るはずの士郎が何食わぬ顔で復帰している事に驚きがあった。まだ寝ていなくてはダメだろうとか、言わねばならない事は山ほどあるが。それよりも――

「――衛宮士郎。貴様、事もあろうにこの厨房(聖域)で子供を肩車しているとは何事か!?」
「そこか。そこなのか。まずは俺の心配が先なんじゃないか? 普通は」

 ことことと煮込んだ鍋の様子を見ながら、士郎は苦笑した。「きゅー?」と白いリスのような獣が小首を傾げている。

「戯け、起きてもなんともないと判断したから此処にいるのだろう。その程度の判断も出来ん未熟者ではあるまい。それよりもだ、動物まで此処に入れているとは……貴様には料理人としての自覚がないのか!?」

 どんな神経をしていると逆上する。断じて有り得ないと言える所業を糾弾するも、とうの士郎は不満そうだった。

「桜に聞いたらビーフシチューが食べたいって言うから……」

 言い訳にもならない。

「そうしたらマシュが料理を勉強したいと言い出して、桜もついでに来る事になった。で、フォウはいつの間にかいた。だから俺は悪くない」

 テシテシと桜の頭を叩く、フォウと呼ばれた小動物。とうの桜は無反応であった。
 俺は悪くないと自己を正当化する物言いに頭痛がするエミヤだ。何せ容姿は肌の色以外は同一、声も自分そのものなのである。セルフキャラ崩壊を見せられているようでいい気はしない。

「桜の身長じゃあ、ここの台所が高すぎて見えないだろ? 料理の手順を見せる為には、肩車もやむをえなかったんだ。フォウには一応ビニール被せてるし問題ないだろ。元々コイツは清潔だし、フォウには桜の親衛隊長を務めるという重要な任務がある。な?」
「フォーウ!」

 元気よく
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