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人理を守れ、エミヤさん!
人理守護戦隊エミヤ(後)
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魔槍を肩に担いでシミュレーター・ルームから立ち去っていく。その間際に、ふと思い出したように言う。

「おう、アーチャー」
「……、……なんだ」
「防禦が巧ぇのは分かっちゃいたが、こと防戦に限って言えば赤枝の騎士にもそうはいねぇレベルだったぜ」
「……?」
「じゃあな」
「……」

 立ち去ったクー・フーリンの背中を、呆気に取られたようにエミヤは見送った。

 今のは……誉められたのか?

 困惑する。

 理不尽に絡まれたかと思えばこれだ。エミヤの知るクー・フーリンとはこんな男だったのか? もしや今の模擬戦は、彼なりのコミュニケーションだったりするのだろうか。これがケルト流の心暖まる触れ合いだと? 頭を振る。流石にそれはないだろう。あって堪るものか。
 思考を切り換える。冬木で戦った時は相当に弱体化していたのは分かった。何はともあれあの位階の英雄の力を、死の恐れもなしに知れたのはいい経験である。この経験を糧に立ち回りを練る機会が得られたのだ。次はこうも簡単に捩じ伏せられはしない。

 さりとて、接近戦は不毛だろう。単純に速さが段違いなのだ。敢えて隙を作って攻撃を誘導する手法は有効的ではない。純粋に対処が間に合わない。
 やはり本職の弓兵に立ち返るしかないだろう。だが生半可な矢はクー・フーリンには通じない。最大火力を以て一撃で決さねば、こちらの命がないのは目に見えている。手堅いのはアルトリアと同等かそれ以上の前衛を置く事だが――そもそもあの脚だ、前衛を無視してこちらに突っ込んでくる様がありありと想像できる。

「……今は、あの男が味方でよかったと思っておこう」

 嘆息してエミヤもシミュレーター・ルームを後にする。時刻は午後の六時ほどか。手も空いている事だ、折角だから職員達の分の夕食でも作っておこうと思う。
 そう思い立つと、エミヤは食堂に向かった。このカルデアは科学と魔術の最先端、どれほどの調理器具が揃っているか、実は召喚初日から気にはなっていたのだ。もしかするとあの男が持ち込んだ物品もあるかもしれない。もしあれば吟味してやろう。

 厨房は一つの戦場だ。「幾度の戦場を超えて不敗」の呪文は伊達だが、幾度の厨房を巡ったとしても何者にも敗れるつもりはなかった。
 食堂に着くも、人の気配が幾つかある。どうやら先客がいるようだ。人の振る舞う料理も乙なものだが、今日は鍋をしたい気分だ。特に意味はないが。厨房は広い、先客がいようと隅の方を借りて作ればいい。そう思って赤原礼装を解除する。
 エプロンを投影しそれを身に付け、厨房の入り口にあったアルコール消毒液で手を消毒する。霊体であるサーヴァントには意味はないが、これは厨房に入る者として当然の嗜みだ。
 厨房に入る。すると、食堂に入った時点で感じていた薫りが、更に芳
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