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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
80話:任地
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介ごとを押し付けられるのはよくあることじゃからな」

ある意味、国防委員会の目論見通りといった所なのかもしれないが、必ずしも誠意ある対応とは言えないし、その片棒を担がされたのかと思うと、良い気分にはなれなかった。司令はたたき上げとは言え、こんな経験をされる事が多かったのだろうか?エルファシルに赴任して1年、軍に信頼を裏切られた避難民たちが帰還して半年。やっと民心が落ち着いたかと言うタイミングで、基地司令官の交代に伴い、私も統合作戦本部への異動を言い渡された。
地ならしが終わり、いよいよ再建と言うタイミングでの異動だ。大変な時期を乗り越えて、これから成果が目に見えてくるというのに、それを見届ける事が出来ない。この一年は不本意なことが皆無だったわけではないが、だからこそ成果をきちんと目にしたかったと思うのは我儘なのだろうか?

「この一年は、司令には及びませんがそれなりに大変でした。やっと再建に取り掛かるタイミングでの異動は残念ですが、軍人である以上、仕方のない事なのでしょうか?」

「まあ、とりあえずはお茶を待つとしよう。部下の不満を受け止めるのも上官の役目じゃからな。まあ今回のような恣意的なことはさすがに頻繁にはないが、士官学校での席次、国防委員会への伝手の有無で貧乏くじを引くものもおれば、逆に美味しい所を担当する者もいるじゃろうな」

あまりしていて楽しくはない話題をしながら、お茶を待つ。従卒がノックと共に入室し、カップをそれぞれの手元に置いて退出していった。司令官室に紅茶の良い香りが漂う。統合作戦本部に戻れば、漂うのはコーヒーの香りになるだろう。この一年に、かなりの回数にのぼった司令とのお茶の時間が無くなる事も、この異動に喜べない要因のひとつなのかもしれない。

「お詫びではないが、避難民の代表でエルファシル復興委員長のロムスキー氏から、少佐への感謝状を書いてもらったし、儂からも復興活動に尽力してくれた旨を一筆書いておいた。少佐は士官学校を出ておるし、ちょうど校長をされていたシトレ大将も統合作戦本部に転出されたと聞く。昇進につながるかは確約できんが、この辺りで思う所を納めてくれればくれればありがたい」

「お気遣いありがとうございます。ただ、私も国防委員会に伝手はありませんし、士官学校の席次も中の上でしたから、あまり期待せずにいようと思います。何しろ卒業試験のひとつだった寒冷地訓練で、あやうく遭難しかけたぐらいでして......」

「ほほう、それは教官役はさぞかし肝を冷やしたじゃろうな。ただ、今頃は『エルファシルの英雄を救ったのだ』と、自慢しておるのではないかな?」

場の雰囲気が少し明るいものになった。ローザス提督に続き、紅茶派で話の分かる年長者と知己を得る事が出来た。ビュコック司令はまだまだお元気そうだし、またどこ
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