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デート・ア・ライブ〜崇宮暁夜の物語〜
デート 前編
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………」
 
 どうやらカップルには気づかれなかったようだったが、琴里の目の前にいた令音はその被害をモロに受けていた。 要はびしょ濡れである。

「ごめっ、令音………」
 
「………ん」
 
 声を潜めて琴里が謝ると、令音は何事もなかったかのように、ポケットから出したハンカチで顔を拭っていった。
 
「………何かあったのかね、琴里」
 
「ん………ちょっと非科学的かつ非現実的なものを見た気がして」
 
「………何だね?」
 
 令音の問いに答えるように、琴里は無言で、令音の後ろを指差した。
 
「………?」
 
 令音は首を回し―――ぴたりと動きを止めた。そして数秒の後、ゆっくりと首を元の位置に戻し、アップルティーを口に含んだ。それから「ぶー」と琴里に紅茶を吹き出す。
 
「………なまらびっくり」
 
 何故か北海道方言だった。令音なりに動揺しているのかもしれない。
 それはそうだろう。何しろ令音の後ろには、琴里の兄・五河士道が女の子を連れて座っていたのだから。しかもそれだけではない。その女の子は―――琴里達が災厄と、精霊と呼ぶ、あの少女であったのだ。

「これは一大事ね」

ポケットから黒いリボンを取り出し、髪を結い直す。琴里なりのマインドセットだった。これで琴里は、士道の可愛い妹から司令官モードへとトランスフォームする。そして携帯電話を開くと、<ラタトスク>の回線に繋いだ。
 
「………ああ、私よ。緊急事態が発生したわ。―――作戦コードF−08・オペレーション『天宮の休日』を発令。至急持ち場につきなさい」
 
 そう言うと、令音がぴくりと頬を動かした。琴里が電話を終えるのを待って、声を発してくる。
 
「………やる気かね、琴里」
 
「ええ。指示が出せない状況だもの。仕方ないわ」
 
「………そうか、この状況からだと―――ルートCというところか。………ふむ、では私も動くとしよう。早めに店に交渉してくるよ」
 
「お願い」
 
 そう言って琴里はポケットからチュッパチャプスを取り出し、口に咥えた。

?

暁夜と折紙はハンバーガーショップを後にし、アクセサリーショップに足を運んでいた。店内はどこもかしこもカップルや今時の女の子達で大半を占められていた。なんとなく場違いな気がして暁夜はげんなりするが、折紙に片腕を拘束されているため、逃れることが出来ない。オマケに、女子中学生や他校と同校の女子高生に男子高校生等が嫉妬や好意の視線を送ってくる。ホントにこそばゆく嫌になる。正直言って帰りたい。と暁夜が嘆いていると、グイッと袖を引っ張られた。それにより、身体の重心が下がり、顔が折紙の顔と同じ高さまで移動する。しかも、顔の距離がとてつもなく近い。折紙の髪の毛に鼻先が触れるか触
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