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デート・ア・ライブ〜崇宮暁夜の物語〜
デート 前編
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は物心つく前だったから余り覚えてないんだけどさ、引き取られた当初は相当参ってたみたい。それこそ、自殺でもするんじゃないかってくらいに」
 
「……………」
 
 何故だろうか、令音がぴくりと眉を動かした。
 
「どしたの?」
 
「………いや、続けてくれ」
 
「ん。ま、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないけどねー。年齢一桁の子供からしてみれば、母親っていうのは絶対的な存在だし、おにーちゃんにとっては自分の存在全てが否定されるような一大事だったと思う。―――まあ、一年くらいでその状態は治まったらしいんだけどねー」
 
「ふう」と息を吐いてから、続ける。
 
「それからなのかなー。おにーちゃん、人の絶望に対して妙に敏感なんだ」
 
「………絶望に?」
 
「んー。みーんなから自分が全否定されてるような―――自分はぜーったい誰からも愛されないと思っているような。まあ要は当時の自分みたいなさ。そんな鬱々とした顔をした人がいると、全く知らない人でも無遠慮に絡んでいくんだよね」
 
 だから、と目を伏せる。
 
「もしかしたら、と思ったんだ。―――あの精霊に勇んで向かっていくようなの、おにーちゃんくらいしか思いつかなかったからさー」
 
 琴里がそう言うと、令音は「………成る程」と目を伏せた。
 
「………だが、私が聞きたいのはそういう心情的な理由ではないね」
 
「……………」
 
 令音の言葉に、琴里はぴくりと眉を動かした。
 
「っていうと?」
 
「………惚けてもらっては困る。君が知らないとは思えない。―――彼は一体何者だね」
 
 令音は<ラタトスク>最高の解析官である。特注の顕現装置(リアライザ)を用い、物質の組成は当然として、体温の分布や脳波を計測して、人の感情の機微さえもおおよそ見取ってしまう。―――その人間に隠された能力や特性すら。
 
琴里は「ふう」と息を吐いた。
 
「ま、令音に、おにーちゃんを預けた時点でこうなるのは大体分かってたけどねー」
 
「………ああ、悪いが、少し解析させてもらったよ。………明確な理由もなく一般人をこの作戦に従事させるなんて可笑しいと思ったのでね」
 
「ん、別に構わないぞー。どうせそのうち、みんなも知ることになるだろーし」
 
 カランカラン、という扉の音と、

「いらっしゃいませー」

という店員の声を聞きながら、琴里は肩を竦めた。

そして手元のコップに刺さっていたストローを咥え、残っていたブルーベリージュースを一気に吸い込む―――
 
「ぶふぅぅぅぅぅぅッ!?」
 
 今店に入ってきたと思しきカップルが令音の後ろの席に腰掛けるのを見て、口の中に収めていたジュースを勢いよく吹き出した。
 
「……
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